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[コメント] 血と骨(2004/日)

意外と主人公の存在感が尾を引かなかった理由。(注意、レビューは冒頭からラストに言及)
グラント・リー・バッファロー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







若い頃はひどい暴れん坊だった人間の一生を描くとなると、たいてい老後はまるく穏やかになった様が映し出されるのが王道だが、この主人公は最期の時まで暴力と金に執着し、家族を支配しようとしていた。首尾一貫している点は非常に潔く感じた。

ただ、鑑賞後この人物のイメージがそれほど心に焼き付けられることがなかった。長男の視点を通してという形をとってはいるが、主人公の描写そのものが強烈過ぎて、喧嘩や暴力、レイプシーンはたくさんあっても、彼が不在のシーンで周りの人間と彼の関係性について描かれることが少ないというのがその一因ではないだろうか。例えば(よく比較されるであろう)中上健次の小説に登場する父親浜村龍造のように、この男が不在の間にこの男のことが周りで噂になるゆえに、いっそうこの男の不気味な存在感が絡みつくということがない。つまり、金俊平は作品中でほとんど全ての行動が描かれているゆえに、観る側としてはその場でのイメージをもって完結してしまい、そこから想像力を膨らますことができないのではないか。

とはいえ、主人公が中村優子に献身的な態度をとっていたくだりは印象に残った。こういう部分がちょっとした場面でさりげなく出てくると、人物像にも作品にも厚みが出てくるような気がした。

*中村優子に関しては、『火垂』で主人公に抜擢された際の情熱的な演技を参照していただきたい。

(評価:★3)

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