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[コメント] シティ・オブ・ゴッド(2002/ブラジル=仏=米)

従来語られることのなかった「シティ・オブ・ゴッド」の物語、諸行無常の響き。
グラント・リー・バッファロー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







前史とも言える、冒頭の三人の若者の話。一人は聖職者として街に留まり、一人は街を出ようとしたところを撃たれ、一人はかつての仲間に殺される。ここで示される話の原型が、次の世代において引き継がれていく。

リトル・ゼの興隆から衰退まで。多くの人間が笑い、泣き、怒り、そして命を落としていったが、彼らが直面する出来事は、かつて三人の若者が辿っていった道と同じものであった。リトル・ゼの屍体から湧いて出てきた新しい世代による新しい時代においても、それらの運命が繰りかえされるのだろう。その街がもつ固有の強力な磁場を感じた。歴史が塗り替えられ、そして繰り返す。

活字を読むことはおろか、カメラの使い方さえ知らぬ街の者たち。語り部が存在しないゆえに、従来語られることのなかった街の物語が、たまたま生き延びた一人の若者によって外部の世界へ語られていく。街の歴史にとって唯一の例外とも言える、この語り部の存在によって外部からもこの街の姿を垣間見ることができた(あくまで垣間見たにすぎないのだが…)。「シティ・オブ・ゴッド」というトポスの強力な磁気を浴び、観ていてかなり興奮をおぼえた。久しぶりに出会った会心の作品。わずかに惜しむらくは、それでも暴力描写がソフトタッチなものであったこと。とはいえ、外部の人間が覗くにはこれぐらいが丁度いいのかもしれないが。(★4.5)

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (7 人)けにろん[*] きわ[*] ina 甘崎庵[*] 死ぬまでシネマ[*] muffler&silencer[消音装置] JKF[*]

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