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[コメント] ドライブ・マイ・カー(2021/日)

この映画を好きか嫌いか問われたら、嫌いかも。でも、最後のたぶん20分くらい、ボロ泣きしてしまった。
もがみがわ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







どなたかが書いていたが、村上春樹のセクシャルな描写はボキャブラリを含め恥ずかしいほど若い。全部読んでるわけじゃないけどそれは概ね物語を阻害している。それがいきなり映画の冒頭に出てくるものだから、嫌な予感しかなかったのだけれど、長さを感じなかったのは、脚本も撮影も演出も、役者もよかったということだと思う。ダイバーシティの観点からも、キャスティングは成功しているというか、文句つけ難い。そして、北海道を走るサーブを観ていて、原作が発表になったときに、ドライバーのみさきが車の窓からタバコを捨てるシーンの描写を、みさきの出身地とされる町の町長だったか町会議員だったかから抗議されたことがニュースになったのを思い出した。その町の人たちは、そういうことをするのだろう、という書き方が、町を貶めているという苦情だった。原作では、北海道は走らないのだけれどね。どのくらい調べてその地名を選んだのかわからないが、火の点いたタバコを車の窓から捨てることが、みさきにとっては当たり前のことで、そうすることに何の疑義も差し挟まれない土地で育ったことを伝える描写として、そう書きたかった村上春樹の気持ちはわからなくはない。単行本、文庫本では架空の地名になっているそうだ。ワーニャ伯父さんの舞台の最後、手話のパク・ユリム西島秀俊とのシーンから、最後のみさきだけが登場するシークエンス、つまり家福がサーブを手放したということは、運転が不可能なほど緑内障が進んだのだろう、あるいは失明したのかもしれないことを仄めかすに至るまで、涙が止まらなかったのです。

(評価:★4)

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