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[コメント] 真救世主伝説 北斗の拳 ラオウ伝 殉愛の章(2006/日)

地獄の沙汰も金次第。
Myurakz

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 テレビ放映終了から18年を経ての再アニメ化。もちろんこれはパチスロ機の爆発的ヒットが切っ掛けとなっていることは間違いないでしょう。だけど僕はやっぱりその人気に頼らない「今だからこその北斗の拳」が観たかった。そして「ラオウの視点から描かれる物語」とか「武論尊(大)先生の中に暖めてあった、欠落していたエピソード」なんてアオリに、「期待している物を見せてくれそうなド本気ぶり」を感じて劇場に行ったんです。

 結果そのド本気ぶりは間違いではなかった。今作は駆け足ながらも真摯に物語を語り、大切にキャラクターを動かしています。新キャラのフウガやレイナ(彼女だけは北条司が描いたということで、その違和感の無さもビックリした)もそれを壊すことなく溶け込んでいる。

 ただ何とも気になったのが“絵の動かなさ”だったんです。人物のセル一枚をスクロールさせることで画面に動きを出そうという手法(何て呼ぶのか知りませんけど)が余りに多く、非常に画面が安っぽく見えるんですよ。またキャラクターが遠くに配置されているときの“顔”がかなりラフに描かれているのもその安さを助長しています。もちろん原哲夫(大)先生の絵を画面の隅々に至るまで描き切るのは至難の業なんでしょう。それを細々動かすのは大変な労力なんでしょう。だけど30分枠のテレビ放送じゃないんだから、それをやり切るのが映画としての勤めなんではないかと。それをこなし切るのが「21世紀に北斗の拳を映画化する意味」なんではないかと。

 ラストのサウザーとの闘いではそれをしっかりやり切っていることから考えても、恐らくは予算や時間が足りなかったってことなんでしょう。どう考えても爆発的ヒットを飛ばせる映画じゃないし、材料費にも人件費にもかなりの足枷があったんだろうと想像します。だけどやっぱり大スクリーンで観ちゃうとアラは気になる。五部作やる予算があるんだったら、本数減らしてでも1本のクオリティを上げた方が良かったんじゃないかと思います。「シュウの叫びで復活するケンシロウ」を筆頭に身震いするシーンもあちこち見受けられただけに、最終的にちょっと勿体ない感じを受けました。アニメーションも大々的に進化を遂げた現在なら、本当はもっとスゴい形での「北斗の拳」が作れたはずです。

 また宇梶剛士は徹底的に失敗。失敗というよりもはや失態。確かに顔はちょっと似てるんだけど、声に覇王としての重みが無さすぎです。大体宇梶剛士の起用って、「北斗の拳」における集客に何か役立つんだろうか。誰が喜ぶと思ったんだろう。上記の予算の件も考えると、もしかしたら内海賢二よりギャラが安かったのかも知れません。たぶん違うけど。

 あと最後に一つ、細かいながらどうしても言いたいことが。挿入歌に「愛をとりもどせ!」を使うんなら、「♪俺との愛を守るため〜」のところは絶対に入れるべきです。あの高音がピリピリと心の琴線に触れるのです。荘厳なクラシックなんて使う前に、自分がもっと良い素材を持っていることに気付きましょう。

(評価:★3)

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