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[コメント] 仁義なき戦い 頂上作戦(1974/日)

戦いの持つ「興奮」の裏には常に「空しさ」があり、このシリーズの1、3作目は「興奮」を、2、4作目は「空しさ」を前面に押し出しているように思えます。祭は始まるまでが一番楽しい。ましてやそれが抗争であったならいかほどか。
Myurakz

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 前作から引き続いて小林旭の存在感は圧倒的です。もうこの辺りになると旭が観たくて画面観てます。

 ただねぇ、いかんせんキャストが、というより配役が弱い気がするんですよね。このシリーズのメインどころである梅宮辰夫松方弘樹は助っ人役だから物語の中心にはいない。で明確な敵味方にいるのは加藤武山城新伍室田日出男などヤクザの格としては二線級のイメージの方々(俳優としてではなく、あくまで「ヤクザの格」としてね)。結局「か、カッコいい!」と叫びたくて映画を観てるのに、カッコいい人があまり前面に出てこないんですよね。前作までで渋味を担っていた成田三樹夫がいないのも個人的には痛かった。

 でさらに文太に到っては「抗争の現場には戻ることはなかったのである」でしょう。いくら旭がカッコよくても、文太逮捕をきっかけに緊張感がボヤけてくるのはやむを得ない。で何だかボヤーンとしてる間に抗争も終わっちゃって、正直ちょっと不完全燃焼なわけです。

 ただし、映画の流れとしてはこれはこれで正しいんだろうなと思います。実際ヤクザに限らず、戦争なんてものの9割は事前のカマし合いなわけで、全面戦争になったら誰も得をしないのはみんな判ってるんです。だからこそそのカマし合いの緊張感が溢れる『代理戦争』が面白かったわけで、それに対して今作は「いざ開戦した時にうろたえる幹部と暴走する若者」の映画っていうことなんですよね。蓋を開ければ思うようにいかない現実と曖昧な結末。溜飲が下がるわけでも頂点を取れるわけでもなく、命ばかりが失われ、得た物は無駄に長い刑期だけ。『代理戦争』が「興奮編」なら『頂上作戦』は「空しさ編」だってことなんでしょう。そういう意味合いでは「燃えないキャスティング」も正しかったのかも知れない。

 ラストシーン、サングラスやコートはあるのに、冷えた足を暖める靴下が履けない武田のアンバランスな姿が、そのいびつさと空しさを象徴しているように見えました。その空しさに4点。

(評価:★4)

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