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[コメント] 回路(2001/日)

ネットは、匿名の自我がリミッターを切ってゲロを吐きまくる墓場でもあるが、そこに漂っていた無数の思念に比べたら、この映画に出てくる幽霊なんざ可愛いもんだ。(追記:2002/7/16)
kiona

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 自分もこのハンドルネームで実践している自我の開放は、インターネットにより初めてもたらされた新たな文化であり、未知への扉だった。そして同時に魔界の開放だった。

 この映画がそういった暗喩の観点からインターネットを扱っているのかは微妙、解釈によりけりだが、黒沢清にしては説明過多であるにもかかわらず、突くべき所を突けていないという印象。

 これまで真摯に幽霊を表現してきた黒沢清が、安直に幽霊を暗喩に用いるとは思えないのだけれど、暗喩じゃないとすると馬鹿話にも思えてしまう。

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 追記というか独り言(2002/7/16):2ちゃんねるの某掲示板にこのハンドル・ネームで実際に書き込んでみたのだが、無礼だとの説教を喰らって帰ってくることに。

 改めて自分のページを読み返してみると、この頃の自分(実はシネスケがネットデビューです)にとってHNと匿名はイコールという感覚だったらしい。

 今は、その記述に自分で違和感を感じる。私生活と同じように人の視線を感じるし、視線が注がれる kiona という媒体のアイデンティティーがだんだん膨らんできて、限りなく本来の自分(そんなものがあればだが…)を模倣しようとしている。そうなると今度は、kiona と自分の狭間のずれが気になり出す。それは年齢や実名を明かしてみたところで、大して埋まらないギャップだ。自らの拙い言葉のみで、自分を表現するための媒体を成り立たせることの難しさ。

 不完全な言葉のみで実体化しようとするが、実体化しきれない…kiona は、まるでこの映画に出てくる幽霊のようなもの。怖いのは自身の消滅以上に、自身以外が消滅してしまうこと。この映画のように。何故なら、誰かに読んで貰うことによってのみ成り立っているのだから。

 ああ いつの日にか みんなどこかへ消えてしまう気がする

 ああ 伝えなくちゃ すなおなその気持ちを 今すぐ   (浅井健一水色』)

(評価:★3)

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