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[コメント] 東京マリーゴールド(2001/日)

つきあっている女の茹でたパスタを、平気で流しに捨てる男。そんな男のために一年で「枯れる」のは、女の恥だ。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







プレゼントに「舐めれば消える」べっこう飴の束を贈る男。そんな男と切れることを災難だと思ってはいけない。

いつもの心地よい音楽に乗って、市川準の映像が踊る。特に意識していなかった田中麗奈がどんどんきれいに見えてくる。インストゥルメンタルの「さとうきび畑」。なんて素敵な東京であろうか。

そこへ夾雑物として小澤征悦が入ってくる。裕次郎の若い頃から男の魅力をそっくり取り除いたような、脂ぎった男だ。こいつは逢った時からマイペースで、合コンの自己紹介のときに我先に料理に箸をつけたりしている。そして散会し、田中とふたりだけになった時に「送るよ」の一言も言えない。ちゃっかり携帯の番号だけは控えておく。付き合ってからもこの男の自己中ぶりは度を過ぎている。その最たるものが、交際する女がいると告げた上で彼女に「一年だけつきあって」と言わせることだ。こんな魅力のない男とのラブストーリーか。正直最後まで観ない気持ちにさせられた。

しかし小澤の彼女が帰ってくる前に田中は身を引く。そして、彼女が実は恋人でもなんでもないことを知る。一方、誰もいない部屋で小澤は泣き崩れる。爽快きわまりない。田中はもはや自由だ。自己責任もとらぬ癖に縛りつける男はもういないのだ。田中のほんとうに幸福な表情が、先輩が彼女を起用したCFを見せられたその顔に浮かぶ。市川作品はこうでなくちゃね。

女が、愚かしい男の打算を振り捨てて跳びはねる、その後ろに流れる幸福な音楽。ここに女優が絶対的に輝く市川ワールドがあるのだ。

(評価:★4)

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