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[コメント] 霧の旗(1965/日)

倍賞千恵子が後半、場末のバーの女給になってからどんどん可愛くなる。この辺りの演出がこの映画のミソ。滝沢修の情けなさも含めて演出設計は見事に成功していると言えるだろう。ただ、この映画で最も良いシーンは倍賞が川津祐介を尾行した後のシーンだ。この家の周辺の雰囲気、狭い路地や霧の表現がグッと来る。
ゑぎ

**ネタバレ注意**
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 殺人シーンや倍賞千恵子の徹底した悪女としての性格付け、エンディングの突き放しといった要素にフォーカスすると後の山田洋次作品では考えられない、山田洋次らしくない映画、ということになるのだが、しかし個々の演出では山田洋次らしさに溢れたシーンが多々あると思う。倍賞が上熊本のホームに立ち、ちょっとロングに引いたカットでタイトルが出る冒頭からもう本作の出来具合が判ろうというものだが、続くクレジットバックの汽車、列車のカットは良いカットばかりで、汽車好きの山田洋次らしい。或いはくだんの川津祐介殺害シーン周りの倍賞の無言劇(霧の中、この家の周辺を行ったりきたりする)におけるきめ細かな、しかし豊かな時間の表現も、このような演出の基調は『男はつらいよ』シリーズで何度も目の当たりにするものだ。例えば『寅次郎心の旅路』で竹下景子が恋人を待っているシーンの時間の演出なんかを挙げることができる。さらに、倍賞が川津を尾行するために待っているシーンで、車のタイヤのホイールに倍賞の脚を映すカットがあるのはいかにも脚フェチの山田洋次らしい。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)けにろん[*] 寒山拾得[*] ぽんしゅう[*] disjunctive[*]

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