[コメント] シェーン(1953/米)
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この映画についての物足りなさの一つがベン・ジョンソンの使い方だ。『黄色いリボン』や『リオ・グランデの砦』や『幌馬車』の後に作られた西部劇であるにも関わらず、この映画のベン・ジョンソンは、酒場でアラン・ラッドと殴り合いをするゴロツキとして描かれるだけで、彼の見事な騎乗技術が披露されない。私なんかに言わせれば、ベン・ジョンソンの馬上での見せ場を用意しないなんて、ジョージ・スチーブンスは西部劇に鈍感な監督であったと言わざるを得ない。
ただし、『シェーン』の拳銃音に関しては、サム・ペキンパーも「ジャック・パランスが酒場の前でエリシャ・クック・ジュニアの農夫を射殺する時のショッキングな銃声が西部劇の歴史を変えた。ここから急速に西部劇が暴力へ傾斜し始めた」と言っている。このシーンが『ペイル・ライダー』で非情に近しいかたちでなぞられているのは周知の事実だと思う。また、シェーンが少年の見ている前で遠くへ置いた空き缶を銃の練習よろしく撃つシーンの拳銃音の凄まじさ。このシーンは私が今見ても確かに衝撃的な音響処理だ。『許されざる者』の前半、イーストウッドが子供達の前で、久しぶりに拳銃を取り出し、『シェーン』と同じく試し撃ちをするシーンがあるけれど、このシーンの一発目の銃声音の度肝を抜く響き!(またそのカットがいきなり遠くへ引いたカットに切り替わる見事さ!)
また、『シェーン』の「ガンマンとゆきずりの母子」という設定は、希代の傑作『ペイル・ライダー』だけでなく、60年代後半に製作された積雪地帯を舞台に持つ美しい西部劇『ウィル・ペニー』でも明かに『シェーン』を想起させる形で踏襲されている。
ちなみに世紀の傑作『許されざる者』のイーストウッドの子供二人の役名は、「ウィル」と「ペニー」。
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#『シェーン』の拳銃音についてのサム・ペキンパーのコメントは山田宏一著、「きょうのシネマは」(平凡社)の『シェーン』の項から引用しました。
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