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[コメント] アベンジャーズ(2012/米)

3.8。期待されていることをほぼ完璧にやり遂げ、あわよくば「それ以上」を狙わんとする志の高さも感じられる。派手だが退屈な「イベントムービー」だろうと高をくくって見に行ったが、しっかり作られた堂々の「娯楽映画」だった。
MSRkb

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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とにかく、このネタを映画化するということがどれほどの困難、面倒くささを伴うプロジェクトであったかは想像に難くない。だが、各方面が期待していることにほぼ完璧に応えられていると思う。作品の内容的にも、興行収入的にも。

私自身は、『ダークナイト・リターンズ』『ウォッチメン』『アーカム・アサイラム』くらいしか読んだことがなく(どれもとても好きだが)、その他は映画化されたものを見たりWikipediaレベルの上っ面の情報で概要だけ知っているレベルの、「アメコミファン」とはとても名乗れない観客だ。今作の前日譚各作品も『インクレディブル・ハルク』と『アイアンマン』しか見ていない。今作に関する(特にアメコミに詳しい人からの)世評として「ぜんぜん知らなくても楽しめるよ!」というのがあるが、全く知識がない人が見るとさすがに序盤は混乱するかなーとは思う。が、それでもヘリキャリアでの戦闘以降は力強い語り口に乗せられて終わりまで飽きることはないだろう。

ジョス・ウェドン(ウィードン)はやはりシナリオの人、という印象で、「絵」としての目新しさはあまりない。だが、マンハッタン戦……具体的に言うならハルクが「僕には秘密がある……いつも怒っているんだ」とキメ台詞をバッキバキに決め、キャップが文字通り「キャプテン」になり、各員の戦闘を縦横無尽のカメラワークで長回し風に撮り(CGI使いまくりだが、ちょっと80年代後半〜90年代前半のオリジナルビデオアニメっぽい「作画」フェティッシュを感じる)……の一連の流れは、ひとつひとつの絵には新規性はないものの、それらが倍々ゲーム的に積み重なりどんどんヒートアップしていくことで、「こんなものは今まで見たことがない」と一瞬感じてしまったほどの「画圧」(音圧みたいなもの)を持っていたと思う。

まあ四次元キューブとかいうのがどんなもんなのかよくわかんなかったし(面倒くさいのでマクガフィンとして脳内処理しといたが特に問題はないようだった)、ロキ以外の敵役がどんな存在なのか、俺はさっぱりわからんかったし(あれもなんか北欧神話の神様の一派だと思ってたんだがなんか違うみたいっすね)ぶっちゃけしょぼいとは思うんだが、ロキさんが異様にかわいらしいというか愛らしいので特に問題はない。一番最初に異次元からブイーンと大登場したときの「ウェヘヘヘヘ」という顔からして最高だ。なんか外宇宙から変な顔の男がやって来た! 杖も持ってる! という間抜けな感じがたまらない(『マイティ・ソー』見てないのでこいつが誰なのか最初わからんかったので)。あとあの黄金聖闘士の中でも弱い奴っぽい鎧姿とかね。もちろんハルクにマンガ風に叩きつけられて「きゅーっ」って(本当に)言うとことかも愛らしい。

ロキさん関係のところもそうだが、ところどころに(いい意味で)気の抜けたギャグが挟まっていて、この映画をキュートなものにしている。特にクレジット後の無言でケバブくっちゃくっちゃシーンは、けっこう長いこともあってものすごく脱力する。いやいい意味で。劇場のそこかしこで失笑が漏れていた。こういう肩透かしっぷり、嫌いじゃないぜ!

2012.09.07(金)新宿バルト9にて

(評価:★3)

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