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[コメント] スピード・レーサー(2008/米)

全編を貫く、あのメロディ!竜の子的メカ描写も忘れず、悪の大企業に立ち向かう古風な正義のヒーロー像を臆面もなくよみがえらせてくれたウォシャウスキー兄弟に感謝したい。長尺にもかかわらず飽きさせない構成にも拍手。
サイモン64

封切り日の 2008.7.5、新居浜TOHOプレックスで鑑賞。レイトショーには観客たったの10人。新居浜市民諸君は何故映画をもっと見ないのだ?

〜〜〜

「マッハ Go Go Go」は、私が幼稚園児だった頃、毎週熱狂して見たアニメだ。流麗なメカデザインにアイデアのこらされた秘密兵器の数々。その主題歌は、今YouTubeで見ても心躍る楽しさと斬新さを感させる。日本アニメの中でも第一級の作品だろう。その「マッハ Go Go Go」を、あのウォシャウスキー兄弟が現代に蘇らせてくれた。

開始早々、あの「風も震えるヘアピンカーブ」のモチーフが心を捕らえて離さない。ストーリー自体は原作とはずいぶん離れてはいるが、押さえてもらいたい風景や登場人物は一通り押さえ、「悪の大企業に徒手空拳で立ち向かう正義感溢れるヒーロー」という、古式ゆかしい設定を臆面もなく再現して見せてくれる。クリスティーナ・リッチのキュートな雰囲気も最高だ。

上映時間は130分とかなりの長尺だが、レーシングゲームの「F-Zero」を思わせる、目がちかちかするレースシーンと、人間同士のドラマ部分の配置が上手く、全く退屈を感じないまま絵に描いたようなハッピーエンドの後、あっという間にエンディングを迎えた。親子の対話のところで、妙にウェットにならないのも良い感じ。

そしてエンディング曲。聞き覚えのあるドラムソロに被さる「マッハ Go Go Go」のかけ声を聞いたときには腰が抜けそうになった。そして「風も震えるヘアピンカーブ」のアノ歌詞!「原作竜の子プロ」のクレジット。そして最後にまた日本語歌詞と英語歌詞の混合で歌う「マッハ Go Go Go」のパートは一緒に口ずさんでしまった。

もうナニも言うことはない。比べることすら失礼だが、一応言っとくと、例の日本最低映画の一つにして竜の子リメイクの「キャシャーン」なんかとはココロザシも力量も比べものにならない。ウォシャウスキー兄弟!アンタ達は偉大だよ〜。まあ、多分日本人と韓国人と中国人の区別は付かなさそうだが、それもご愛敬だ。私もフランス人とイギリス人の違いはわからないからな。

残念な点を二つあげると、一つ目は時々重量感のない挙動をする車の動き。リアルとアンリアルの境目は微妙だが、もう少し物理法則に沿った動きの方が良かったかも知れない。もう一つは主人公の弟とチンパンジーの使い方。関西人である私は、話している相手が「今笑って欲しい」と思っている瞬間を察知して笑うことができる。この映画で主人公の弟とチンパンジーが出てくる場面はもれなく笑うところなのだが、観客層によってはなかなか理解されにくいかも知れない。特に最後の最後に弟とチンパンジーが出てくるところは、私はおかしくて死にそうになったが、愛媛県新居浜市では笑う人ゼロだった。

少々の欠点はともかく、「スピードレーサー」は本当に楽しい体験だった。上映中、ずっと微笑みながら見ることが出来た映画は今までこれくらいだ。それだけ私が年を取っていて、「マッハ Go Go Go」への思い入れが深いという事なのだろう。

もう一つ残念なところがあった。主人公がレース後、車から飛び降りてオリジナルと同じ決めポーズをするところがあるのだが、そこでカメラがぐるっと90度回って、オープニング曲の最後のカットをなぞって欲しかった。しかしそうはならなかったのである。しかしまあ、それはミクロな話だな。

ただ、この映画は多分興行収入を余り上げないだろうなと思う。オリジナルを知らない人が見て楽しいかどうかは全く私には予想も付かないのだ。ただ、そんなこと関係なく、持てる財力で自分たちが作りたい映画を作って、ついでに私も感激させてくれたウォシャウスキー兄弟には、心から感謝したいと思う。ありがとう。

あ、あと、『宇宙の騎士テッカマン』を、誰かリメークしてくれないか?

(評価:★5)

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