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[コメント] 復活の日(1980/日)

驚くべきことに小松左京という天才は、このコロナ禍でも、アメリカがいかにもアメリカらしい強迫観念から、ウィルスを敵対する大国の生物兵器と間違えるだろうと正確に予見しているのだった。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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世界的流行のウィルスを、ソ連の細菌兵器だと確信しているホワイトハウスのホットラインに、ソ連から連絡が入る。「書記長がウィルスで死亡しました」。しかしそれでもペンタゴンの狂った幹部は核ミサイル発射の暴挙に出る。この疑心暗鬼の物語は、ネトウヨがパニックになった(ないしはパニックを引き起こそうと画策した)「これは細菌兵器だ」の中国陰謀説に余りにも似ている。

本作ではアメリカ産と判明するこのウィルスが最初にイタリア風邪と呼ばれているのも、「病原体が一種類か六種類かも判らない」もの新型コロナに似ている。こういうウィルス(=英題)についての色んな薀蓄はとても興味深い。原作読んでみたいな(図書館は閉鎖中)。緒形拳の医療崩壊は本邦の強迫観念のようだ。三千万人が死亡して「日本は戒厳令」と報じられている。珍しくエロに走らない真面目な多岐川裕美の看護師の造形は印象的。

しかしこのウィルス、「ワクチンができた」で試してOK! という驚天動地の畳み方には何のドラマもなく、軽すぎただろう。世界は二度滅んだのアメリカ核ミサイル乱れ撃ちも、娯楽映画で扱うには荷が重すぎただろう。既存の爆発映像のオンパレードと思えば興味深いものはあるが。

南極圏での国境超えた協力という物語は、じっくり描けば面白いものだっただろうがさすがに尺足らず。最悪なのは女性に強いる原始共産制の決定の件で、その時点でワクチンが開発されていない先行不明のなか、子孫を残す決定など考えられない。また、感染防止のため、罹患した乗組員のいる潜水艦を爆破する件は、非情を語るのだがどうにもノリが軽薄に見える。前半も無線での自殺ほか、子供を無駄に殺し過ぎただろう。

潜水艦連投は『渚にて』と印象が被り損しているだろう。特撮はアメリカ人スタップの名前があるが、すこぶる貧しい。マイルスで有名なテオ・マセロは「音楽プロデューサー」とジャニス・イアンのテーマ曲の「作曲」とあるが、劇伴までしているとは思えない(エンド・タイトルで「音楽」羽田健太郎、「音楽監督」鈴木清司とある)。草刈正雄は寡黙な造形がいいのだが、薄っぺらくキリストを模した終盤はキリスト教徒の反感を買っただろうと容易に想像される。

終盤、草刈はワシントンから南極まで数年かけて徒歩で辿り着くのだが、真っ直ぐ進めばいいものを、高度2400mのマチュピチュなんぞ経由しているのがバカバカしい。観光に寄ったのだろうか。ラストは高校の友人のO君が好きだったのを思い出した。「オリビア・ハッセーから貰った草刈正雄のペンダントが、ピカアと光るねん。そのときわしの目からも、涙が溢れてよお」。感動する人はそうなんだろう。私はそんな純粋に映画を観れたことがない。

私的ベストショットは草刈の俺も連れて行ってくれのボー・スヴェンソンとの喧嘩で、喧嘩自体は意味不明だが、背景の南極の湖がすこぶる美しい。これ写したいがための喧嘩なんだろう。

(評価:★4)

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