★4 | リベリアの白い血(2015/米) | アフリカ最貧国のリベリア。生真面目な男シスコ(ビショップ・ブレイ)は、ゴム園で馬車馬のごとく勤勉に働いていた。隣人のアブラハムは過酷すぎる労働条件に怒り、仲間たちもストライキに加わって不満の声をあげる。シスコも妻のジョイ(ゼノビア・テイラー)や子供たちのため代わる仕事を得たいとは思っていたが、踏ん切りがつかないまま日々は過ぎていった。そんな頃、アメリカで暮らしている従弟のマーヴィン(ロドニー・ロジャース・べックレー)が帰ってくる。彼はシスコに、希望のないリベリアを発ってアメリカで収入を得ないかと誘う。同意したシスコはニューヨークへと従弟に誘われるまま飛ぶが、そこにも希望は待っていなかった。〔87分〕 | [投票] |
★3 | ハニー・シガー 甘い香り(2020/仏=ベルギー=アルジェリア) | 1993年、フランス。ベルベル人系の裕福だが厳格な家庭に育まれた少女セルマ(ゾエ・アジャーニ)は、奔放な性愛を楽しむ周りの同世代に憧れ、男たちと遊戯に耽っては両親を嘆かせていた。それは名門校進学の解放感ゆえでもあったのだが、学問に没頭して産婦人科医の地位を得た母(アミラ・カサール)はセルマが高学歴を望むことに、なぜか批判的であった。そして愛情を深めるいとまもないうちに、セルマは少年ジュリアン(ルイ・ペレス)と肉体関係をもつ。これを知り、セルマの父(リエス・セーラム)は家父長権を振りかざして娘と少年の結婚を推し進める。その裏に民族の因習の深さがあった。(98分) | [投票] |
★3 | アリスの空(2020/仏) | スイス育ちのアリス(アルバ・ロルヴァケル)は、一念発起して陽光溢れるレバノンへ旅立ち、そこで職をみつけて明るく暮らそうと考え、実行に移す。そんな彼女がカフェで出会ったのが、ロケットによる宇宙雄飛を夢見る物理学者のジョセフ(ワジ・ムアワッド)。ふたりはたちまち恋に落ち、結婚してベイルートのアパルトマンにスィートホームを構える。ジョセフの妹ミミ(マリア・タヌリ―)にも祝福され、やがてひとり娘のモナ(イザベル・ジゴンディ)を授かった夫婦だったが、レバノンには暗雲が影を落とす。内乱が勢いを増し始めたのだ。街々に銃弾は飛び交い、仕事は中断され、平和な暮らしにもひびが入り始めた。〔90分〕 | [投票] |
★4 | その日、カレーライスができるまで(2021/日) | 夜の安アパートの一室。外は叩きつけるようなざんざ降りの豪雨のなか。男(リリー・フランキー)は厨房にひとり立っている。卓上に散乱するジャガ芋、ニンジン、玉葱、ロース肉のパック…男はカレーを煮込もうとしているのだ。男にとって、妻の誕生日には3日仕込みのカレーを用意し、ともに食べるのが習わしになっているのだった。ラジオでは、陽気な声のDJ(吉田照美)が「三日目のカレー」のメールを話題に取り上げている。男の初めてのメールだ。やがて激しい雨音とともに電気は切れ、部屋を無音と暗闇が支配する。それでもカレーを作り続ける男。彼の胸に、今はもういない息子への思いが去来する…。ほぼリリーによる一人芝居で成り立つ作品である。(52分) | [投票] |
★1 | 三大怪獣グルメ(2020/日) | 天才青年として科学的手腕を謳われた田沼(植田圭輔)は、今は職を辞し寿司屋の跡取りとして精を出す毎日だった。だが、些細なアクシデントから彼は岡持ちを海中に落としてしまい、そこに入っていたタコ、イカ、カニは何らかの化学変化で大怪獣に変貌、市街を破壊しはじめた。田沼がその精製に携わった、生物を巨大化させる因子、スタップ細胞について知るSMAT(シーフードモンスター・アタックチーム)の隊員・星山(吉田綾乃クリスティー)は彼を馬鹿にするが、司令官の響(木之元亮)は怪獣撲滅のため力を貸してくれ、と入隊を乞うのだった。そして、応戦のあいだに切断された3怪獣の肢を試食したSMATの面々は、怪獣の筆舌に尽くせない美味を知る。〔84分〕 | [投票] |
★4 | 天の高みへ(1977/伊) | ある日、一群の人々がローマ法王庁を訪れた。司祭や修道尼、労組の代表者、医師や無垢な少女、聾唖者たち…。彼らはこれから法王に謁見する興奮に浮かされていた。案内役に導かれて応接室ほどもある大エレベーターに乗り込んだ人々は、これに最上階へと送り届けられるはずだった。だが変化がない。10分、15分たってもエレベーターはどこかに到着せず、人々は訝る。男たちはドアに体当たりし、女たちは救済を求めて声をあげる。しかし何事も起こらない。疲れやイライラに急き立てられる人々は、だんだんに怒りを募らせる。尿意に失禁し、壁面を燭台で殴り、飢えや渇きを感じ始める。そして、暴力への欲求は高まってゆく。〔83分〕 | [投票] |
★1 | 君は彼方(2020/日) | 澪(松本穂香)は幼馴染みの新(瀬戸利樹)といつも一緒だったし、そこに何らかの感情を押し挟むこともなかった。ある時仲良しの女子が新を好きになり、彼に告白したいと打ち明けたとき、彼女はつい「応援する」と言ってしまう。もとより面倒を嫌いどうとでもなれ、とすぐ諦める体質の澪にとってはいつものことだった。だが、デイトで占い師(土屋アンナ)に未来を占ってもらい、その結果に苛立って喧嘩してしまった新に本当の気持ちを伝えようと、雨降る夜中に飛び出した澪は事故に遭ってしまう。気がつけば、澪は普段と変わらない池袋の街にいたが、そこで縫いぐるみ(大谷育江)や和服の少女(早見沙織)の口から、怖ろしい事実を告げられるのだった。〔95分〕 | [投票] |
★3 | ヨーゼフ・ボイスは挑発する(2017/独) | ドイツの芸術家であり、のちに米合衆国に拠点を移したヨーゼフ・ボイスは吠える。「概念としての芸術は拡大し、もはや一つ所に収まることなく社会全体を飲み込むに至っている。ならば全ての国民は芸術家であり、芸術に参加し行動することが義務となる」両親の愛情を受けず育ったボイスは、第二次大戦時には戦闘機乗りであったが撃墜され、頭蓋損傷のダメージを受けながら帰国、彫刻家として活動を始めた。彼はやがて「社会彫刻」を標榜、好事家の自宅や美術館に収まらぬマキシマムな芸術に目覚め、行動する。エキセントリックな彼を誹謗する声は多かったが、むしろ彼は対話を喜ぶのだった。映画は反骨の芸術家を追う。〔107分〕
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★3 | イロイロ ぬくもりの記憶(2013/シンガポール) | シンガポール。やんちゃ盛りの少年ジャールー(コー・ジャールー)の両親は多忙を極め、子供を教育する暇さえないためにメイドを雇い入れる。やって来たのはテレサ(アンジェリ・バヤニ)、フィリピン系の女性である。彼女と同室に眠ることに拒絶の態度を見せるジャールーだったが、やがて彼はテレサの甲斐甲斐しくひたむきな接しかたに心を開くようになるのだった。だが、時代は不況への坂を転げ落ちる様相を見せ、営業マンの父親(チェン・ティエンウェン)は失職してしまう。そして家の屋台骨を支える母親(ヤオ・ヤンヤン)は、日々の苛立ちをテレサに向けるようになってゆく。カンヌ映画祭新人監督賞ほか受賞のアンソニー・チェン作品。〔99分〕 | [投票] |
★3 | ザ・ホワイトタイガー(2021/インド) | 「俺は白虎、まれに生まれ出る天才だ。奴隷で終わる人生など似合わない」バルラム(アダーシュ・ゴーラヴ)の父は貧しいカーストに相応しい一生を終えたが、子の彼は自分で人生を選択できると信じていた。家族から有り金をふんだくってゆく地主の家族のもとに戻ってきた、アメリカ帰りの甥アショク(ラージクマール・ラーオ)。その都会的な風貌に、自分が仕えるに相応しい主人のイメージを抱いたバルラムは、自らを売り込みその運転手となる。アショクに献身的に仕えるバルラムだったが、誕生日を迎えた主人の妻ピンキー(プリヤンカー・チョープラー)が浮かれて車のハンドルを握ったとき全ては狂う。彼女は路上の子供を撥ねてしまったのだ。〔132分〕 | [投票] |
★3 | バーニング・ゴースト(2019/仏) | 青年ジュスト(ティモテ・ロバール)は長い眠りから覚めた。彼は案内役の人物のもとを訪ね、これからどうするべきかを聞く。数年が過ぎ、ジュストはいくらかのことを理解した。彼のように、一部の人にしか見えない存在は多くいる。彼らは一度死んでいるのだが、何らかの目的を抱いてこの世に帰ってきたのだ。ジュストは自分の目的を思い出すために、しばらく案内役の仕事を手伝っていたのだった。そんなとき、電車で彼はひとりの女性に呼び止められる。アガト(ジュディット・シュムラ)という彼女は、もと恋人だった彼そっくりの男を探していた。彼女の話にジュストは心を動かされ、やがてどちらからともなく抱き合った。しかし、次の朝異変が起こる。〔106分〕 | [投票] |
★3 | ラジオ・コバニ(2016/オランダ) | イスラム国・ISによって蹂躙され、占領されたシリア北部の町、コバニ。大学生の娘ディロバン・キコはラジオ放送をはじめる…クルド人民防衛隊の迎撃と連合軍の支援空爆によって故郷が奪還された朝に。人々はISの猛攻から逃げた。残った者たちも焼かれ、首をはねられた。そしてコバニは瓦礫の海となった。だが、それらに瞳を伏せている日々は過ぎ去り、人々は街の再建に乗り出す。ディロバンはかれらを鼓舞するように指導者や詩人の声を引き出し、人々の希望の声を拾う。絶望から再生に向かうひとつの街の素描であるドキュメントフィルム。〔69分〕 | [投票] |
★3 | ロバマン(2019/日) | 元サラリーマン、今は孤独な隠居の身である吉村(吉田照美 )は、世間の悪に怒りながら手を出すこともできず、愛聴するラジオ番組に小さな怒りをしたためたハガキを送る68歳の男だ。妻(熊谷真実)や孫(小池美波)にも相手にされない非力な彼だったが、ある日UFOに攫われ、それに乗ったロバ星人に「ロバマン」に変身する腕バンドを授けられた。68分だけ無敵の能力を使える力を得た吉村は町内の悪に敢然と立ち向かい、皆から賛否両論を受けながら「正義」の鉄拳をふるう。そんな彼を脅威と感じた悪の親玉・オールナイト星人(笑福亭鶴光)は、邪悪の使者を差し向けるのだった。吉田照美68歳記念作品。〔68分〕 | [投票] |
★3 | 夕方のおともだち(2021/日) | 老母を介護しながら水道局に勤める男・ヨシダ(村上淳)は、夜には女王様・ミホ(菜葉菜)の待つクラブで責め苛まれるマゾヒストだった。だが、この頃の彼はSMプレイにも身が入らず、しまいにはミホに呆れられてお仕置きを中断されるような日々が続いていた。かつてヨシダを調教し、鞭の味を忘れられぬ体にしながらも、ある日突然店を辞めてしまったユキコ(AZUMI)のことを思い出すからだ。ミホとは心を理解しあい、平凡なセックスをもしあう仲ながら、ヨシダにとって彼女は友人以上にはならなかった。おりしも彼らの市の市長選挙が迫るある日、ユキコが候補の男のウグイス嬢を務めているのを知ったヨシダは、ミホを放り出して彼女を追う。〔115分〕 | [投票] |
★4 | カランコエの花(2016/日) | ある高校、7月。女生徒・月乃(今田美桜)たちは仲良し4人組でいつも行動している。彼女らのクラスで英語の授業が休みの日、保健のハナ先生(山上綾加)が教壇に立った。先生が黒板に大書したのは「LGBT」の文字。誰もが知る性的少数派の総称だ。ハナ先生は、決してこういった人々は異常ではない、差別してはならないと滾々と説いた。だが男生徒・裕也(笠松将)は他のクラスでは英語は行われたと聞きつけ、うちだけあんな授業をしたのは張本人がクラスにいるんじゃないか?と笑う。彼の無責任な放言は日を追うごとに真実味を帯び始め、月乃にある日ひとりの女子が声をかける。第26回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭でグランプリ受賞。〔39分〕 | [投票] |
★1 | コルボッコロ(2019/日) | 人類が高度集中社会の原動力として「自然の力」を利用し、その杜撰な使用に怒り彼らに牙をむいた精霊たちを封印して十数年。権力者の忘れ形見のすず姫(西野七瀬)は、毎日学ばされる歴史書にうんざりし、皆のいないうちに勉強部屋を抜け出して冒険に出た。都市の中央にそびえ禁忌の対象となった塔の頂上にあった、奇妙な鳥居のもとに転がるトゲだらけの玉。仲良しのすいか少年(原奈津子)が「タネ」だというそれをすずが植木鉢に植えると、「タネ」はたちまち成長し動物とも植物ともつかぬ「コルボッコロ(大森日雅)」になった!それはすず姫を乗せて空を飛び夢中にさせたが、お目付け役のじい(茶風林)はコルボッコロを危険と判断するのだった。〔34分〕 | [投票] |
★3 | 西部戦線異状なし(2022/独) | 第一次大戦末期。17歳の少年パウル(フェリックス・カマラー)は友人たちとともに陸軍に入隊し、洗い立ての軍服を受け取って意気揚々と出兵した。塹壕戦の続く北フランス戦線に配属されたパウルたちは、そこで先輩カット(アルブレヒト・シュッフ)と友情を結び、ともに近隣の農家からガチョウを盗んで食べるなどの浮かれ気分を楽しみながらも、現実が想像より苛酷な日々の連続であるとすぐに納得させられるのだった。一方、ドイツ軍将校エルツベルガー(ダニエル・ブリュール)は膠着状態に陥った戦争を終結させるべく、上層部を説得し敵国フランスとの休戦条約を結ぶべく奔走する。1930年ハリウッド映画の独国リメイク。〔147分〕 | [投票] |
★2 | イノセント15(2016/日) | 同級生・成美(小川紗良)に、銀(萩原利久)は愛を打ち明けられるが、すぐ「ごめん」と頭を下げる。銀は成美のことなど好きではなかったからだ。しかし成美は彼を諦めず、同じ高校に通って、そこでもう一回愛を告白する、と執拗にアピールするのだった。実は親が離婚している成美は、薄情な母(宮地真緒)によって愛人に初夜権を買われていたのだ。同じ頃銀がビジネスホテルの自宅に帰ると、昔逢った男が父親(山本剛史)のそばにいた。彼は妻を亡くした父に寄り添ってくれた男であり、愛し合う仲だという。父の恋人に嫌悪感を抱く銀は成美に会いにゆき、彼女を求める義父から奪い取るが、好きでもない成美とどうするか考えあぐねるのだった。〔88分〕 | [投票] |
★3 | すすめ、カロリーナ。(2018/日) | ポーランドの女性、若きカロリーナ。母国で日本の将棋に触れ、その虜となる。慣れぬゲームで次々と倒される母国人を物足りなく思い、はるばる日本へとやってくる。だが、ここで初めての敗北を喫する彼女。同じ女性棋士でも本場の棋士はレベルが違う。帰途につきながら彼女は熟考を重ねる。…ひとり悩み、成長してゆく若者の奮闘を淡々と描く。〔3分〕 | [投票] |
★1 | あした世界が終わるとしても(2019/日) | 幼い頃、母親が呆気なく突然死してしまい、それ以来少年・真(梶裕貴)は非社交的人間に身を落とした。彼の幼馴染み・琴莉(内田真礼)は真に対し欲望を露わにしろと言いたい気持ちを抑え、告れよ馬鹿と毒づく日々だった。さて、外宇宙にはある計画の結果もう一つの地球が併存することになり、専制君主コトコ(千本木彩花)によって支配されるもうひとつの日本が生まれていた。ふたつの地球の住人には必ず育ちの違う同一人物がいる、という法則があり、片方が死ねばもう片方も息絶えるとの事実が明らかになる。真とつながったテロリスト・ジン(中島ヨシキ)は真を守り琴莉を倒すため星を越え、察知したコトコも手を打つのだった。〔93分〕 | [投票] |