[コメント] 小さな中国のお針子(2002/仏=中国)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
正直ね、★を5にしようか4にしようか迷いました。けれど、何だかシミジミ後から良くなる映画でした。
其の1★何に一番圧倒されるって、やはり音とロケ地ですね。村長が、村人を呼んだ時の山彦、山に響くヴァイオリンの音色、派手な音楽で装飾されず、効果音としてではない、村人の話し声とハエの音。実際に映画からは聞こえないけど、まわりの滝の音や鳥の声まで聞こえてきそう。自然の音を映画に使うとこんなに素敵で効果的だったんですね。
そしてポッカリ大きな穴が開いた山(岩?)に、端から圧倒されてました。(←この“穴”を、映画を観る2日前に古本屋の写真集で偶然見ていたので驚いた!)
ダムに沈む寸前、紙の船に灯った蝋燭のシーン・・・あのシーンを多くの方に映画館で見て頂きたい。それ位美しかった。
おじいちゃんが錨の刺繍を施して、村の女の子がセーラー・ルックに喜ぶ姿・・あれが本当のお洒落だね!粋な爺さんだ。
其の2★村で一生を終えるはずの女の子が、文字を憶えたり、禁止されていた洋文学を読んでもらったり、恋をして、子を身篭り、そして堕胎し・・・。(あの、お針子の、何を感じる風でもなく、ただじっと上を向いて流す涙は、女としての複雑な心境を良く表現してたと思う。監督は女の気持ちがわかるのか?)原作を読んでいませんが、劇画タッチで描けそうな物語を、終始淡々と描く事によって、彼女の微妙で情熱的な胸中が増した様に思いました。
其の3★そして、禁止されたのは、麻薬でも酒でも博打でもなく・・・人間の心を広げる“文学”。文革により迫害された彼等の悲劇より、この映画には希望があった!(ここら辺は、後に感じた事だが。)
ルオが仕事を早く終わらせる為に進ませた10分少々の時間が、回顧する何十年後に全く狂わず1秒1秒時を刻んでいた所!平和だろうが激動であろうが、時間としてみれば誰にでも同じ1秒1秒の積み重ね・・・この余韻は感涙でしたが・・・、セピア色のダムに沈むシーンはちょっと現実に戻されちゃった・・もう少し幻想的であって欲しかった!(と、観る側のワガママとしてはね)
難癖をつけながらも★5。やっぱ素敵!
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・ちょっと思った事
余韻と言えば、マーとルオが街に観に行く映画が“北”のものだった事。近い将来、北のお針子が“本”によって歩き出す日が来ることを願って。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (7 人) | [*] [*] [*] [*] [*] [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。