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[コメント] サンダーボルト(1974/米)

気の触れたウサギ運転手やハンマーで車を叩くバイク少女など、ただただ楽しくて不可解な挿話や細部が盛り込まれているのがいい。しかし何と云ってもこの切なさは尋常じゃない。かつての「西部劇」のような美しい空の下、プロフェッショナリズムと中高生ノリで貫かれるおっさん達の青春。
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私は冒頭のクリント・イーストウッドジョージ・ケネディの追いかけっこでもう泣きそうになってしまう。ケネディが本気でイーストウッドを殺そうとしているようにはまったく見えないのだ。そう、これはただの中高生男子的なじゃれあいにすぎない。そして中盤以降はジェフ・ブリッジスジェフリー・ルイスも加わって、おっさん四人のじゃれあいになる(一連のアルバイトや強盗計画シーンの幸福なことときたら!)。

この青春のさまが強く心を打つのは、その青春がかりそめのものであり、「終わり」が不可避のものとしてはっきりと意識されているからだろう。成功するにしろ失敗するにしろ、強盗が終われば四人の幸福な関係(=青春)も終わりを告げる。事実イーストウッドを除く三人は死ぬわけだし、ケネディはイーストウッドとブリッジスを「裏切り」さえする。しかし、強盗をやり遂げた三人の死は決して「無念の死」ではないし、ケネディの「裏切り」は二人を警察からかばうための行いでもあるのだから、この青春の帰結の仕方はきわめて幸福なものだ。幸福な時間を最も幸福な形で終わらせようとする男たちの物語。だからこれはどうしようもなく甘く、切ない映画だ。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (7 人)ぽんしゅう[*] けにろん[*] 緑雨[*] sawa:38[*] ヒエロ ナム太郎[*] shiono

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