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[コメント] ビッグ・フィッシュ(2003/米)

面白い!!・・・だけど、俺はこんなお涙頂戴の美談を聞きたくて、ラストまで涙を堪え込んでいたんじゃない。決して悪くない、むしろ大変な秀作。しかし、この作品でティム・バートン監督に抱いた大きな失望は隠せない。
HW

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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「滅多に無い死に方だ」と度々豪語する親父に計らずも早い段階から良識打ち壊しの妄想賛美映画として強行完結する大暴挙への期待を抱いていた。それはベネット先生の「退屈な現実と、素敵な作り話、どちらを選ぶ?」というセリフにも確実に高められていた・・・ハズだった、中盤までは極めて順調に。

ところが、実際には、空想が現実を覆す観客唖然の問題ラストシーンへの待望は微塵も叶う事無く、映画はありきたりな父親賛美に終わってしまう。こんなのはホラ吹きというより、単なるユーモラスなオッサンじゃなかろうか?独特の趣味を残しながらも、以前よりどこか丸みを帯びた風を見せていたこのバートンに、それを裏切る『マーズ・アタック!』並みの毒々しい爆発力が内包されている事を期待したのだが、芯まで丸い「良作」で貫き通されてしまった。この失望は大きい。「退屈な人生に素敵な空想を!」というテーマを予感させていた前半が、何時の間にやら「程好い空想で人生に彩りを!」と謳い上げる終盤へと変貌してしまい、高められた期待との隔たりに困惑ばかりが残された。

ファンタジー仕立ての父と子の美談ならば、スピルバーグゼメキスあたりで十分(決して彼らがバートンに勝る劣るとか「仕立て」が良い悪いとかではなくて)、バートンにはもっとマニア魂で突き進めて欲しかった。綺麗サッパリと新路線を打ち出したのならばともかく、この映画はかなり中途半端なのだ。空想への深い愛着を示して置きながら、空想が現実を凌ぐ事を最後まで許さない。結局、その可能性だけは大いにちらつかせたものの、一線踏み切れず、傑作に成り損ねてしまったという印象が残る。実に惜しい。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (7 人)Orpheus マルチェロ グラント・リー・バッファロー[*] JKF[*] kiona[*] 死ぬまでシネマ[*] のこのこ

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