[コメント] Deep Love 劇場版 アユの物語(2004/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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ホントに、この映画の最後に打たれたクレジットを見て卒倒しそうになった。生まれて初めてだ。この人はたぶん「捧げる」って言葉の意味も知らんのだろ。このクレジットを見て思ったんだが、このYoshiって人は本気でこの物語に「罪がない」と思ってるわけで、要するに、今さらながら私の全人格をかけて言っちゃうけど、この男はバカなのだ。バカに映画を作らしちゃいかんよバカに。
もっとも、この程度の問題認識で小説を書きたいとか映画を作りたいとか思ってるバカはずっと昔からいたはずだが、バカに映画を作らせても商売にならないから誰も金を払わなかった。
この映画が内包する問題が根深いのは、ケータイ小説という奇妙な文化(それ自体は否定しないが)によって、このバカの物語が商業ベースに乗ってしまったことだ。それどころかバカ売れしてしまった。本がバカ売れすりゃ映画化されるのは必然だ。
ふと立ち止まって考えると、いったい誰がこの映画にストップをかけられたのか。
Yoshiに、「最初からこんな糞みてえな話を書くんじゃねえ」と言ったところでそれはまったく意味をなさないし、この程度のダメで有害な文章をネット上に流している輩は腐るほどいる。
読者に「読むな」というのも無理がある。インターネットがアクセスを規制されない以上、何人たりともこの話が発表され続けるのを止めることはできない。そして読んでしまった読者に「感動するな」というのももちろん無理だ。
では、書籍化しなければよかったのか。この出版不況のご時勢にあって、編集者にとって「売れる企画」は喉から手が出て血を吐いたって欲しくてたまらない「飯の種」だ。そしてYoshiは確実に当たる馬券だった。無下に書籍化した出版社や編集者を責めることもできない。映画化に関わった人たちにも同じことが言える。出版や映画がビジネスとして死ねば、私たち客は良質な作品に出会うことさえできなくなってしまう。
んーでも、それでもね、それでも。
各出版社様や映画制作会社様にはやっぱり言いたいですよ。こんなの、ダメですよこれ。普通に仕事してる編集者やプロデューサーだったらYoshiがニセモノだってことは判断できるわけじゃないですか。それ判断できないような人間は業界でメシ食っていけないですよ。そうでしょ?だからね、モノの送り手としてね、ほんの少しでもプライドがあるんだったら、こんなので商売しちゃダメですよ。自分らの仕事が持ってる巨大な影響力っての、そこ目をつぶったらダメですよ。人ひとりの人生変えちゃう可能性がある仕事でしょうよ。
だからさ、この『Deep Love 劇場版 アユの物語』映画化に金を出したエライ人たちよ、やっぱ悪いのはあんたたちだよ。このタイミングでYoshiの名前が商売になるって判断は正しいよ、けどさ、あんたら映画人だったら、このYoshiの原作から舞台と設定だけ借りて、ちゃんとプロの脚本とプロの演出でマトモな映画つくりゃよかったんだよ。Yoshiが監督脚本やりてえって言ったとしても、あんたら映画人のプライドかけて説得すりゃよかったんだよ。説得できなきゃ企画自体やめるかYoshiブン殴るかしろよ。どうしてもやりたきゃ原作Yoshi、脚本○○、監督○○、それでいいじゃない。それでみんな今よりいくらか幸せだよ。その予算引っ張るくらいの労力は使おうよ。
今、このケータイ小説っての、どんどん後追いが出てますよ。プロ作家の壁がガンガン低くなってます。大袈裟じゃなく、本当の意味で時代が変わったんだと思う。10年20年前ならこの程度の物語が300万人の目に触れることなんて絶対にあり得なかったと断言できる。いいことでもある反面始末が悪いのが、こうしたダメな作品が商業ベースに乗って評価されなかったとき(当然評価されないんだが)、支持者である少女たちにとってそれが「大人は分かってくれない私たちの物語」に変換されてしまうことなんだ。他にどれだけいい作品があったって、彼女たちは大人の評価に耳を傾けてくれなくなっちゃうんだ。そしてますますダメなものが世に蔓延するんだ。ダメなものをつくってしまうことの罪は、つまりこのダメスパイラルを起こしてしまうことにあるんだ。
だから、こんな時代だからこそ、送り手には嗅覚や資質より矜持が問われてるんだと思うんですよ。あんたらのプライドかけて真贋を見極めて、この時代だからこその「文化」っての、目指してくださいよ。そこんとこ、よろしく。
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