[コメント] デビルマン(2004/日)
公開から1年以上経ち、その間にネットや映画界のこの映画に対する騒動はずっと見てきた。 原作自体は私はドンピシャの年代だから最初から最後まで知っているし、この作品のネタバレもすべて読んできた。 つまり、今回観たのは「検証」みたいなものであり、期間も経っていることもあって比較的冷静に観たつもりだ。 今更書くのだから皆さんの感想とは違うものを書けたらいいなあ、と思ったのだけど・・・
ネタがない。
それくらいこの作品に関してはとんでもない情報量を得てきたのだった。ありとあらゆる罵詈雑言がこだましたネットレビューで、ケチをつけられた箇所を全部合わせたら「この作品の詳細なあらすじ」になったという驚異。確かに今回の「検証」でも自分は言葉を失った。配役を熟練の演技派で固めてもケチがつけられそうな名作にも関わらず、そこに素人アイドルを主役に持ってきたっていうのは作品を軽んじていると思われたって仕方がない。思うに、この大騒動の鍵はそういった我々のようなデビルマン(というか世で一般的に名作とされているもの全般)に対して特別な思い入れを持っている者と、どうやら関心は話題性と自分のオシゴトの一環としてしか捉えていない制作側のギャップの問題ということは観てわかった。
この制作チームの失敗は、そういう思い入れというものを敵に回したという部分だ。思い入れとは自分の価値観でもあり、今回の「製作」はこれを否定されたのと同じような意味合いを持っているとも言える。いい喩えが思い浮かばないが、強いて喩えるなら「ヘタレなヤツに、目の前で自分が尊敬する無二の親友を貶される」ときの感情に似ているとでも言おうか。自分が貶されてもなんともないのに親友を貶されたときに沸いてくる、あの怒り。私以外にもこんな感情を持った人も多いのではないか。
主演の2人のダイコン演技も話題になったが、素人は責めたって仕様がない。何言ったって下手なものは下手としか形容ができないわけだし、怒りよりも歌も演技もブレイクしそうにない今後の彼らの行く末を哀れむ気持ちのほうが大きかった。 問題だったのは素人に語らせるならもっと巧い台詞回しを書けたはずの「プロの」脚本家と、 素人を主役に持ってくるならもっと違う見せ方が出来たはずの「プロの」監督の才能、ということだ。 どんな愚材であってもそれなりに食える料理を出してくるのがプロではなかったのか。少なくとも私はそれがプロの最低のハードルだと思っていたが、どうやら違ったようだ。
この企画の発端は「いつか自分の手で映画化したい」と思っていた、かつてのマンガ青年かも知れない。 CGは確かに現代だから出来た(それにしては予算の都合かチャチィけど)ものだろうし、今の技術と金があるなら、そりゃあ「俺のデビルマン」を映像化したいのはわかる。現に私だってしてみたいし、他のファンだってそういう妄想を描く人は多いだろう。 その上で、そのマンガ青年に聞きたいのは「君の描いていたデビルマンはコレなのか?」ということ。 我々が興奮したのは悪魔の世界、ではなく人間のドラマではなかったか?ということ。
この作品に怒っていらっしゃる方々の気持ちはよくわかる。 我々のデビルマンはLOTRと同じくらいの重さなのだ。 ピーター・ジャクソンにこの原作を持っていって、映画化してくださいと頼み込める勇者はどこかにいないか。 彼ならきっとこの作品なら映画化したいと思うはず。三部作で(笑)。
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