コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] プラトーン(1986/米=英)

綺麗事を言えば,憎むべきは相手国ではなく,人の心に芽生える魔ということか。しかし,それにしても…,
ワトニイ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







最後まで気になったのは,北ベトナム側の描き方。というより,北ベトナム側・敵兵のことがまったく描かれておらず,ひたすらアメリカ兵(=人間)に対して見えない脅威が迫ってくるという,まるで『プレデター』のような描かれ方だった点。普通,戦争を描いたら,敵国がどう考えてどう部隊を動かしたかとか,敵兵がどう思ってどう行動したかなども少しは描くはずだが,この映画はまったく違った。

もちろん,憎むべきは敵国ではなく,極限状況の中で誰の心にも芽生え得る邪悪な心(「魔が差す」の「魔」と言った方がいいかもしれない)だと言いたいのだろう。

だが,それにしても,恐れたり苦しんだりして戦っているアメリカ兵に比べ,感情もなく迷わず攻めて来るように描かれていた敵兵の姿は非常に無機的で不気味だったし,人間として描かれてはいなかったと思う。アメリカから見たアジアというのは,こんなものなんだろうか。

また,村人が罪もなく殺されるシーンからは確かに戦争の悲惨さが伝わってきたが,ここでさえ,村人の言葉は字幕で出ておらず(英語の字幕も出なかったから,おそらく英語版でもそうだろう),人間(=文明人)として描かれてはいなかったような気がする。この映画は,ベトナムの人々を人間としては描いていないのだと思う。

アメリカ兵の中では,黒人が白人に対して不満を言うシーンがあったが,結局,「アメリカ人(白人)>アメリカ人(黒人)>アジア人」という構図が明らかで,アメリカの,アメリカによる,アメリカのための戦争映画という気がした。この作品でいう”人間”とは「アメリカ人(黒人)」以上,すなわちアメリカ人だけなのだろう。

…と,いろいろ文句を書いたが,全体としては戦闘シーンにも迫力があり,筋もそれなりにしっかりしていたし,またエライアスとバーンズの葛藤も面白かったので,この点数。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (7 人)Pino☆[*] Myurakz[*] スパルタのキツネ[*] 24[*] takud-osaka[*] アルシュ[*] sawa:38[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。