[コメント] いま、会いにゆきます(2004/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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今作は梅雨の物語だから当然なんですが、雨のシーンがとても多い映画です。そしてそのシーンの大半を自然の景色の中に持ってきたことで、その緑に活き活きと濡れた美しい背景の役割を与え、その雨を「恵みの雨」として我々の目に届けてくれます。溢れ返るような木々の中、辺りに見えるのは傘の下で寄り添う彼ら家族だけ。澪という恵みの雨を再び得ることで、巧と佑司は水をいっぱいに吸い込む植物のように、もう一度生の活力を得ることができる。そんな風に楽しく美しい緑を表現したことで、今作は僕らに梅雨を「幸せの象徴」として観せてくれます。
そしてだからこそ、梅雨明けの夏の空がとても悲しいものに見えてくるんです。突き抜けるような爽快な青空の下、人々はみんな夏の到来を喜んでいる。空は青々と高く澄み切っているのに、自分たちだけがそれを望んでいない。世界が感覚を共有してくれない寂しさの中で、澪との別れの時がやってくる。
一般的にいえば梅雨は鬱陶しいものであり、夏は気持ちいいものです。今作ではそれらを両方とも素晴らしく美しく描き出すことで、不思議なことに我々に普段と全く逆の感覚を共有させてくれているんです。だからこそ彼らは世界で彼らだけの家族となり、僕らはその彼らだけの物語を共に感じることができる。
物語としての品の良さも、さりげない展開も好感が持てます。真摯な物語を真っ直ぐ描こうとしている感じがする。そしてその品の良さが自然の美しさと相まったことで、映画自体を常に「透明感のある寂しさ」が包み込んでいるように思えました。良作。
あ、あと竹内結子は全肯定。ポケットのシーンはズギューンって来ました。ズギューンって。
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