まぁ見た目はさておき、演技に関しては非常に頑張っていて良かったと思います。「オープニングの酔っ払い演技」や「長い廊下での超長回し乱闘シーン」など、何度かはかなり驚かされましたし、ラストの笑顔もとても切なかった。終始「愛せる主人公」を作り上げてくれていました。

　ただね、この映画を「復讐者同士の物語」として考えると、どうしてもウジンの方が魅力的にならざるを得ないんです。彼は自分の罪を理解したその上で、全てを賭して復讐を行っているわけで、受動的に復讐者にさせられた主人公とは覚悟の程が違うから。覚悟が匂い立たせる「色気」が違うんです。

　これにはウジン役ユ・ジテの好演も手伝っていたんだと思います。いや、正直最初は「なんか力の入らない半端な悪役が出てきちゃったなぁ」とか思ってたんですけどね。それが話が進むに連れ、この人のイヤらしい悪さがどんどんと光ってきたんです。何かね、岸部一徳を若くしたみたいな黒い色気があるんですよね。エレベータ内を横っ跳びになっての自殺シーンも、それまでの笑顔と対照的で非常に壮絶で良かった。

　そんなわけで、途中からウジンの物語ばっかり気になっちゃいまして、正直興味の対象として主人公を越えちゃったんですよね。映画としてはそれもまたそれで「アリ」なんだろうけど、贅沢を言うなら主人公にももう一歩魅力が欲しかった気がします。多分その「魅力」もまた、途中のコミカルさによって薄められてしまった「色気」なんだろうなぁ。

　あと、それでもやはりラストは後味悪すぎ。上手く記憶が消せたのかのも定かではないけど、消せていなかったら「娘とやっちゃった男」のままで、消せていたら「知らずに娘とやり続ける男」になるわけでしょう。いや、ハッピーエンドにする必要はないんだけど、やっぱりまずは「うへぇ」って思うよね。こればっかりは致し方ないです。うへぇ。