[コメント] エル・スール −南−(1983/スペイン=仏)
ファーストカットの朝の透明な空気。赤い毛糸。その下のベージュのカーペットの質感。家事をする母親をつなげたシーンの幸福感。妙にマイナーなブルームーンの歌声。初聖体拝受の日の父と娘が踊るワンシーン・ワンカット。エンエルムンド!もう麻薬的だ!
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
まず、見せないという演出が最高に巧い。省略の巧さ。謎の提示の仕方。謎を謎として突き放し、それでいてドラマの全体像を浮かび上がらせる見事さ。ここでのオーロール・クレメンの扱い方。祖父の扱い方。
そして、ホテルのレストランでのシーン。このカットバック(リバースショット)はどうだ。これこそ映画の王道をいく演出だ。これ程のカットバックは久しく忘れていたという気がしてならない。現在の映画作家は皆どこかに置き忘れてきた演出だ、という気がしてならない。ビクトル・エリセは一見、詩的で散文的な作風に見えるのだが、しかし、これ程説話的にねられた映画は無い。ラストもこれで良いと思う。南の風景を見せたかったのは判るが、しかし、見せないことで、この映画を恐ろしい迄の厳格さに高めている。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (7 人) | [*] [*] [*] [*] [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。