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[コメント] パッチギ!(2004/日)

歌の持つ力。頭突きの持つ痛み。そして人の持つ力。
Myurakz

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 歌じゃ世界は変えられない。だけど身近な人たちの心の向きを少し変えることくらいはできる。日本中が歌や個人の力を闇雲に信じていた70年代を舞台に、逆にその時代だからこそ浮き上がって見えてくる「小さいけれど確かな、本当の歌の力、人の力」が描かれています。人ひとりができることなんてたかが知れているけど、だからこそ身の回りから順番に変えていこうってことでしょうかね。

 また、そんな「人の持つ小さな力」という視点で見ると、アンソンのパッチギにも意味があるように思えてきます。人間の体で一番堅い部位である頭。そこを相手に叩き込む「頭突き」は敵に大ダメージを与えられる反面、己も大ダメージを負う諸刃の剣であるわけです。「人を殴れば殴った方の拳も痛いんだ」とはよく言われる言葉ですが、頭突きには拳と比較にならない恐怖と痛みが伴う。要は、恐怖に包まれた恐ろしい敵でも、攻める時にはやっぱり痛いし恐いんだってことの象徴としての「パッチギ」。そして人と判り合おう、繋がろうとするなら、己も痛い思いをする覚悟が必要なんだという意味での「パッチギ」。今作のタイトルが「殴る」でも「蹴る」でもなく「頭突き」であるのは、頭突きの持つそんなイメージと関連しているのかも知れないなぁと思いました。そして物語を通じて実は「最も変わらない」アンソンは、最初からパッチギを通じてそんなコミュニケーションの本質を理解していたってことなのかも知れません。

 時代、国、運動、歌、暴力。そんなある種限定的なテーマがしっかりとまぶされていながら、非常に普遍的な「人と人の映画」となり得ていたように思います。特にヤンキー連中がみんな最高に良い「顔」をしているのが、観ていて非常に気持ち良かったです。

(評価:★4)

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