[コメント] 天国と地獄(1963/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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主人公に同情した刑事達が正義感を振りかざして、犯人を極刑に追い込む為に危険を冒してまで更なる犯罪を重ねさせようとするのは完全に暴走でしょう。(ある意味警察らしい?) おかげで一人のヤクチュウ女が死んだし。(この女には同情するどころか気にかける刑事もいない) 子供の命を救う為に破産した主人公に代わって犯人に復讐を誓い、真実を暴いて逮捕するだけではあきたらず、法の鉄槌で死刑にしてしまえと正義の集団よろしく燃え上がる刑事たちには一気に冷めてしまいました。 それまでの過剰でない程度にプロフェッショナル集団加減が良かったのに。 まるでたまにアメリカ映画に感じるような安い正義感を見てしまった気がする。 昔の映画のべとべとしたエネルギーは好きですが、あざとい倫理感を持ち込まれるのはちょっと。。
もう一つ。資本家から一介の靴職人に戻ったかのような主人公は良かったですが、不幸を背負ってると言って、丘の上のブルジョアを憎む犯人にややピンと来なかった。医者のインターンだから結構な身分でしょう。 家のすぐ下の長屋に住むエリートという意外な犯人像だからこそ動機に否応無く興味を惹かれてしまうのは当然で、おかげで僕なんか犯人登場のファーストシーンから犯人の素性と動機を楽しみにしてしまった。 だからこそ最後の面会のシーンを中途半端に感じてしまった。別に犯人側のドラマを細かく知りたかったわけではないし、謎のままならとことん謎でも良かった。
「資本家と庶民が「憎しみの両極端(BY三船)」になってしまう不条理な社会」というメッセージを込めた最後の犯人との面会シーンになるんでしょうが、そういった悲しい歪みも大して感じられなかったし、訴えてこなかったし、結局犯人を中途半端に描いて、主人公との対比によるメッセージが中途半端になってしまった気がします。
『ジャッカルの日』や『現金に体を張れ』のように純粋な犯罪映画にした方が変な消化不良を起こさずシンプルに堪能できたと思いました。
と、言う事で非常に面白く緻密に計算された退屈しない映画でしたが−1にしました。
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