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[コメント] ホテル・ルワンダ(2004/伊=英=南アフリカ)

この作品がしばらく買い上げ皆無になっていた理由に、アフリカの小国ルワンダのいざこざに日本の観客が食指を動かす筈がない、という配給会社の理屈があるが、それこそが日本の恥ずべき常識であることを問題視していただきたいものだ。
水那岐

この映画には、ターゲットの一部であるリベラル派白人への擦り寄りと思われる数人を含む白人が少数出てくるが、画面を覆い尽くすのは貧富を問わず黒人である。

その中で、主人公は自国を二分するふたつの種族を分け隔てなく救っていくことになるが、その中で頼りとしていた白人…国連軍将校までもが白人のみを救出して事足れリとすることに我慢がならず、自国人すべての命を考えるようになる。このあたりは、先ほどの皮肉が通用しない厳然たる事実だ。もともと主人公は家族を中心に逃亡させようと行動するのだが(そしてそれは最後まで続く価値観なのだが)、結果は目的を正当化させる。そのナショナリズムは恥ずべきものでは決してない。この物語は決して芸術的に昇華されたアートフィルムとしては評価できないが、現実を直視する機会として端まで味わいたいリアリズムの映画だ。

なお蛇足だが、主人公を「アフリカのシンドラーだ」と呼ぶマスコミがあるが、これには抵抗を覚える。シンドラーにはシンドラーの、ルセサバギナには彼の理想があり、目的がある(何よりシンドラーの行動の目的は同情だが、ルセサバギナの行動には家族や隣人の庇護といったのっぴきならない理由が絡んでいる)こんな言葉を鵜呑みにしている日本人の大半の、欧米への奴隷根性は恥ずべきものがあると思えて仕様がない。外国人と深くつきあいながら、心では母国をこの上なく愛しているルセサバギナ氏は、こんな事実を越えて自らの意志を誇ることのできる存在である。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (11 人)りかちゅ[*] るぱぱ プロキオン14[*] ハム[*] 甘崎庵[*] SUM[*] ころ阿弥[*] リア[*] セント[*] ペペロンチーノ[*] NOB[*]

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