[コメント] かもめ食堂(2005/日)
外観だけではどんな料理の店かさっぱり分からない「かもめ食堂」、店のドアを開けるのには勇気ときっかけがいる。
日本からの二人の旅人は店で働きたいと申し出る。職を得る為ではなく、自分の居場所を見つける為に。
3人の口うるさいフィンランド人のおばちゃん達はシナモンロールの香りでやっと店の扉を押し開けた。
そうやって集まってきた人々は「かもめ食堂」の狭い店内にそれぞれ自分の指定席を作っていった。
日本から遠い国へ女がひとり旅をするという決断と実行力。東洋人が経営する訳の分からない食堂に入るという好奇心。それぞれ違いはあれど一歩踏み込んだ所に新しい居場所が待っている。
それをさせるのが小林聡美演じるサチコの「いらっしゃいませ」と柔らかな微笑みの成せる業なのか。丁寧過ぎるでもなく、意気込むでもなく、ナチュラルな歓迎の言葉と笑みが、この映画の空気を優しく支配していく。
冗長かと思われる繰り返しの日常も、狭い店内の撮影が多いという閉塞感も、この優しい空気に包まれゆったりとした時間の中に打ち消されていってしまう。「癒し」という言葉で括ってしまうのは何だか勿体無いような透明な時間が感じられる。
登場人物の背景をあえて深く描かない事で逆に妙なリアリティが生まれ、物語の透明感はさらに増すことになるという演出方法は良い結果を生んだと思う。
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