[コメント] フル・モンティ(1997/英)
映画を見終った人むけのレビューです。
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黄色い歓声を上げる女性客のみを映し、あえて本場のダンサーたちをスクリーン内に登場させなかった、冒頭のストリップショーのシーン。あれは、主人公含むオッサン軍団たちのダンスと比較されて、その付け焼刃ぶりが露呈してしまうのを避けるためという理由もあったんだろうけど、見終わってみると、最後の最後で「アレ」を見せるための「焦らし」テクニックだったんだと納得。
たがだか「男の客が混じっているから」という理由で、本番直前の土壇場で突然「脱ぐ」ことを躊躇する主人公(ロバート・カーライル)、それを喝一発であっという間に吹き飛ばしてしまう息子、最後のショウをより劇的に演出するために無理矢理とってつけたようなこの挿話も、思いっきり御都合主義なんだけどなんだか憎めない。
人物の内面描写はポイントを絞って最小限に、でも父子愛や夫婦愛など押さえるべきとこはシッカリ押さえて、お話の筋立て(失業→仲間集め→ストリップショー)と背景(不況にあえぐ労働者階級)をきわめて効率的に語るその語り口。ストリップショー一発で大儲けしてやろうというヤマ師根性が、目的が本末転倒して「とりあえず脱いどけ!」というタガの外れた楽天性に変化してゆく過程、そして最後の一瞬の爆発力(フルチン見せ!)に賭けるこの映画じたいの潔い構造。多少のアラや飛躍はあれど、上映時間90分足らずという思い切った短さとも相まって、このきわめてシンプルで力強いわかりやすさは最高に素敵だ。その説話的経済性、緩急タメのきいた語り口は、さんざん焦らした後に片手ワンタッチであっけなく外されるズボン&革ヒモパンに象徴される。ウワオー!
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