[コメント] 間宮兄弟(2006/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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「ボタンダウンの似合うスタッフが新しい笑いとニュアンスの映画を作りました」──本作DVDの冒頭に流れた森田の劇場処女作『の・ようなもの』のキャッチコピーである。森田には、時代感覚という言葉がよく似合う。社会に広くアンテナを伸ばし、誰かが作らなきゃいけないだろう映画を、森田は作る。この『間宮兄弟』はもちろん、『(ハル)』にしろ『39』にしろ、森田作品のいくつかはその時代において確固たる必然性を獲得している。
なんて回りくどい賛辞を並べなければこの文章を書き始められなかったのは、恥ずかしながら私自身が間宮兄弟に痛く痛くシンパシーを感じてしまったからである。特に非モテ男の権化のような塚地武雅演じる弟が、相手から目線をそらしながらどこかで聞いたような正論を並べ立てるあたりなど、ほとんど鏡を見ているようだったといっても過言ではない。ああ恥ずかしい。
そんな私にとっては、沢尻や常盤を彼らが自宅に誘う勇気が、もうそれだけで眩しくさえあったよ。出張先のオートメーションのビール工場で兄貴が“人間の力”を実感して喜ぶさまが、その性根の潔さが嬉しくて涙が出たよ。
もうこうなったら堂々と言おう。『間宮兄弟』は私の映画だ。無理して若作りしちゃいるが、その実、彼女いない暦が片手で数え切れなくなった三十路男たる私自身の映画なのだ。ありがとう森田!兄弟のいない私は、「それでもいいさ」と今宵もひとり自分を慰めるよ!
余談だが、「ボウリングの球を後ろに投げる」「投げた拍子に転ぶ」というボウリング場における2大鉄板ネタを完璧に演じて見せた中島みゆきという詩人の業の深さには恐れ入りました。
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