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[コメント] 浮草(1959/日)

松竹の小津とは明らかに違うその違いが堪らなく魅力的な大傑作。
ナム太郎

その違いとはまったくもって凄いとしか言いようがない「親方」中村鴈治郎であり、その鴈治郎とさえ四つに組める強さと艶やかさと純な気品に唸るしかない京マチ子であり、歩くという立ち居振る舞いの美しさを改めて思い知るだけでなく、キスをするときのその腕の絡め方でさえうっとりしてしまうしかないうら若き美しさを放つ若尾文子であり、一見やはり小津の映画だと思わせておきながら土砂降りの雨などを利用して確かな自分印を刻んでしまうしたたかな魔術師宮川一夫でありという、そうそうたる面々の大映印に満ちた仕事の数々であったりするわけだが、そんな違いがありながらもやはりこれは小津の映画だとしか言いようがない映画を撮りあげてしまうところに改めて映画作家小津安二郎の凄さを感じてしまう。

しかしその肝が「小津映画の4番バッター」杉村春子であることは、これはもう疑いようのない事実であり、そのような意味では「鴈治郎の子を宿してしまった過去を持つ女」などという通常の小津映画においては多少無茶に思えるその設定も、本作においては至極まっとうな、いや、むしろそれ以外は考えられない選択なのだと受け止めた。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (5 人)irodori けにろん[*] ぽんしゅう[*] 3819695[*] 緑雨[*]

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