[コメント] スパイダーマン3(2007/米)
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前作から楽しみにしていた、ゴブリンJr.との対決を一旦脇に置かれた時点で、思わぬうっちゃりを食らいましたが、いざ最後まで見通して本作の感動のピークはどこぞやと言われれば、砂男の誕生。立ち上がるにも足元から崩れ、まるでその資格を剥奪されたかのように、娘の写真のロケットに触れた手も崩れ、悲しみの表情すら思うように作ることも許されない、そのあまりに悲しい異形の姿。人はどうだか分かりませんが、自分ホントこういうのに弱い。子供の頃に見たウルトラマンのジャミラ辺りから、どうにもこういうのには無条件降伏です。ま、その後にあっさり人間の姿になるんですが。
今回もゴチャゴチャした話を(多少強引なりとも)ある程度上手く纏め上げて、しかも纏めあげたという小賢しさを感じさせない出来、ということでは十分楽しめました。が、しかし、正直な感想としては「スパイダーマンよ、オマエもか・・・」といったトコロ。憎しみから生まれる暴力(報復)というのは、ヒーローものを立体的に描こうとすればどこかで発生し得る問題だと思うし、ましてやポップなコーティングの中に内省を多分に含んだ本シリーズとしては、避けて通れない問題、と言ってもいいかもしれない。
でもね。今までは、等身大のヒーローがぶち当たる問題を、あくまで等身大サイズ(広がったとしても地域レベル)で描いてくれていたので、こちらも等身大レベルで考えたり共感したりできたのです。しかし今回9.11の匂いがかなり漂ってきたとはいえ、実際にアメリカ国旗を背負ってる「絵」で宣言されてしまうと、どうも個人的に違和感を感じてしまいます。個人として対峙していたはずの対象の背後にそんなものがあからさまに置かれると、また見方が違ってくるかと思うのです。「何もスパイダーマンでそれをしなくても」というのもあるし、さらにはあえてそういう描き方をしたことで、今までのシリーズの美点が少し損なわれているような気がするのです。
では、本シリーズの美点とは何ぞやと言えば、その大きな要素として「バランス」があると思うのです。コメディリリーフとシリアス、荒唐無稽さと現実味、緩急、そして何より、作り手側の作品世界とその外側からの視線が、絶妙なバランスで釣合いを保っていた、と思うのです。何といえばいいのか、作品世界に没入しながらも、常に平行して作品を外側から見つめる自己批評的な視線が上手いバランスをとっていたと思うのですけど、今回殊にラストに進むにつれて、作品そのものに批評眼が気圧されてしまっている、そんな気がしました(あえてそうしているのかもしれないけど)。
とはいえ、相変わらず細部は面白いし、MJも良かったです。というか、少々くたびれた風情だったり鬱屈したものを抱えた役柄の方が、味が出てるような気がしました。でも、今回の裏MVPはフレンチレストランのオヤヂスタッフ一同に差し上げたいと思います。ベタでも大好きです。[3.5点]
(2007/5/20)
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