鑑賞していて、気に入った点が２つある。

１つは、それぞれのエピソードに関してほとんど「意味」を持たさなかった事。そよ（夏帆）が線路で転んで、立ち上がれなくなったところを大沢（岡田将生）に助けられるシーンや、二人のキスシーンなどをそれなりにドラマチックに演出する事も可能だったはずである。原作の影響もあるのだろうが、それらをあくまでも日常のヒトコマという立ち位置を崩さずに描いた事は、本作に関しては評価できる。全体のゆったりした流れこそが、本作の持ち味であるからである。

もう１つは、「アイドル映画」としての作り方、売り方を一切拒絶している事。鑑賞前に不安視していたのは、夏帆の演技に関して一定程度妥協をしているのではないかという点だったのだが、特に違和感もなく（島根の方からするとどうかは分かりませんが）、観る事が出来たので安心した。

それにしても、ここまで「盛り上がり」とか「伏線」というような言葉と無縁でありながらも観ていられる映画は珍しい。スタッフ、キャストの力量が素晴らしい事の証左であると思う。いい作品でした。