[コメント] デス・プルーフ in グラインドハウス(2007/米)
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「THE END」という文字がドーンと出てくるタイミングがあまりに爽快で、大爆笑してしまった!!!
『キル・ビル』(Vol.1)やこの『デス・プルーフ』を観ていると、タランティーノは本当に好き勝手できる幸せな監督なのだなと思う。初期の『レザボア・ドッグス』や『パルプ・フィクション』はタランティーノのセンスが発揮された傑作だが、初期の頃はさすがに今ほど飛ばせてなかったような気すらしてくる。
何気ない会話の面白さはもはや説明不要で、今回のガールトークの数々も聞いているだけで楽しい。タランティーノの脚本は内容も面白いが、言葉の選び方も面白い。「ジャングル・ジュリア」「スタントマン・マイク」というキャラクターの名前もそうだし、タイトルにもなっている「デス・プルーフ」もそうだし、スタントマン・マイクのジャケットの背中に書かれた「ICY HOT」や彼が飲む「バージン・ピニャコラーダ」という言葉もそう。スラングに交じって聞いていると、どこか響きが爽快に思える。それが、タランティーノならではの世界観を築く。
状況、場所が違う物語をいくつも混ぜ合わせていく構成もタランティーノらしい部分だが、今回もテキサスとテネシーの物語を前後半で重ね合わせる。基本的な作りは同じなのに、強弱の関係など、物語自体は手のひらを返したように真逆になっている。これが実に効果的で、ラストシーンの爽快感の大きな要因になっていた。
ジャングル・ジュリアたちはスタントマン・マイクにグチャグチャに潰される。ゾーイ・ベルたちは逆にスタントマン・マイクをボコボコにしてしまう。前半のクライマックスでの大クラッシュ、後半のクライマックスでの完全KO、これは別のベクトルを向いているが、どちらもものすごく快感。おそらく後半の方は、単体では得られない快感なのだ。シーンとしては、あのクラッシュの方が派手なのに、それと同等またはそれ以上の快感を後半のラストでも与えるのは、ギャップの大きさがあったからだ。
そこで、スタントマン・マイクのキャラクター変化。これが肝なのだと思う。演じたカート・ラッセルの功績が大きいし、このキャラクターを生み出したタランティーノの功績も凄まじい。美女軍団も魅力的だったが、ベストキャラクターはスタントマン・マイクに捧げたい。“デス・プルーフ”な男かと思ったら、全然“デス・プルーフ”じゃないじゃないか!? …というギャップが見事すぎるほどだった。
そして、本筋とは関係のない会話で登場した兄の「スタントマン・ボブ」の存在も気になって仕方がない。願わくば、スタントマン・ボブの復讐の物語が見たくなってしまうほどだ。
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