ロードムービーにしたかったのか、ヒロインはいきなりアメリカ横断の旅に出るわけだけど、ストーリー運びの焦点はぼやけた感じ。そして砂漠ですら感じる独特の閉塞感。でもこれがこの監督にしかない色なんだ、と改めて感じた。どこで撮ろうと誰を撮ろうとそれは変わらないのはむしろ嬉しい。冒頭のカフェのシーンの話の薄っぺらさに比例した密度の濃いカメラワークや雰囲気がたまらない。

ちょっと偏見かもしれないけど、アメリカ人でもフラれたぐらいでこんなにネチネチする女の子がいるのだろうか？この感覚はやはりアジア人のような気がする。ノラ・ジョーンズがフラれたばかりの頃に着ている服が、良い。薄い素材のワンピースを一枚で着て、足元は黒いハイヒール。エロス。「私、待つわ」と云わんばかりのじっとりとした色気を放つこの感じは『欲望の翼』のマギー・チャン。監督、ここまで一緒ですか。まあ、出てる女優ぜんぶ似たような人ばっかだし。＞（ノラ、レイチェル・ワイズ、ナタリー・ポートマン＝ブルネット・意志の強そうな眉・ロリータな色気） レイチェル・ワイズのぼさぼさの髪の向こうから覗く色っぽい目とか、不幸な人妻感がわかりやすすぎてたまりません。ていうか監督、好みがわかりやすいよ。でもいいんだ。私のとぴったしだから！（そういえばジュードの元カノのロシア人も良い女だった。この監督はちょっとした脇役の女の子もみんな綺麗に撮るんだ）

ジュード・ロウも最近観た中での彼の作品で、これが一番良いと思った。煙草を上手に吸うなあ。食堂のオーナーの薄汚れた感じがまた色気があるし。ほんとイイ男だ。鼻にティッシュ詰めてても格好イイもん。（伸びたランニングシャツとパンツ姿のトニー・レオンのように）。 そして最近観た中で一番良いと思ったキスシーン。パイをやけ食いしてカウンターで眠ってしまう（おそらくウソ寝の）ノラを見つめるジュード。クリームだらけのノラの顔にそっと影が落ちる。次に映った彼女の顔にはクリームがない。そして複雑な表情のジュード。・・・・・・・。うん。この監督とはきっと気が合う。(08/04/04 劇場）