[コメント] ミスト(2007/米)
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やっちゃいそうで。
確かにラスト慄然とした。ああ!すべて思っていたことは間違いだったのだ! という暗転。一番遠ざけてきた事態を「自ら招いてしまった」という、底知れぬ恐怖を味わった。
でもエンドクレジットを見ているうちに、だんだんそうでもなくなってきたのだ。あれ?なんで? これ、「思っていたことは間違いだった!」というのが、主人公の信念と行動が何か間違っていたというのではない、時限爆弾の2本の線のどっちを切るか「選んだ方を間違えた」っていう類の話、運が悪かった、なのだからなんだろう。「すべて思っていたことは間違いだったのだ!」というのが、本編の倒叙になっていない。それがしっくりこない。
子供だけで留守させているからと言って最初に出て行ったおばさんが、子供を従えて勝ち誇ったように(主人公&観客にはそう見える)通り過ぎていっても、信じたものに「差」のない両者であればそれはタマタマの結果としか思えない。一つには建物の外に出たものはやはり助からない(最初から外にいた人が助かっている分には構わない)というのにして、やはり理由はあっても外に出た主人公が間違っていたとする(出て行かざるを得なくなった理由はとても上手く出来ているし)。そして狂信者のおばさんは死なずに「生き残り組」にいれば、本編とラストとリンクがとれる。作品の構造上はそうするべきだったように思う。まあ、最悪の後味になって、観客から物を投げられたかも知れないけど。
俺も間違っちゃいそうで怖い、という恐怖のインパクトがでかすぎる。それは既存のドラマの常軌に反している(自分の子供は殺さんだろう、2つの線のうち爆発するほうは切っちゃわないだろう、という)からでかいだけ。そして本編で積み上げてきた心理劇的恐怖と掛け算されていないどころか、それを全否定さえしてしまってる、と言ったら言い過ぎか。バッドエンドだから、というよりも、私としてはそこでちょっとマイナス。
それを割り引いても本編は素晴らしい。大いなる力の前で何を信じてよいのか、宗教?知性?教養?直感? 多用な価値観を良しとしてきたがゆえにか、現代に生きるわれわれ人間が、よるべしものを見失い、いとももろく日常の均衡が崩壊してしまうものなのか、という不安に陥る恐怖を描いた心理劇は上質。そして魔に取り囲まれた建物に残された人々、というシチュに萌える。『ランゴリアーズ』大好きなんで。
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