[コメント] ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!(2007/英=仏)
映画を見終った人むけのレビューです。
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とは云え、終盤に繰り広げられるアクション・シーンには不満も覚える。それはある時代以降のアクション映画に共通して指摘できる、「またか」と思わざるをえない問題でもあるのだが、カメラと被写体との距離が不適切に近く、カット割りが多すぎるということだ。村民たちのガン捌きの堂に入ったことときたら実に面白いのだが、やたらと動き、めまぐるしく切り替わるカメラはそれをきっちりと見せてはくれない。自転車に乗って二丁拳銃をぶっ放す婆さん、またニック・フロストが開けた車のドアーでそれをノックアウトする、なんていうのも楽しいアイデアなのだが、演出家の「ワンカットであること」に対する意識の低さが興奮を頭打ちにする。アクション設計に限らず、ライトは編集を過信しているように見える。映画の質はあくまでも一続きのロングショットが決めるのだ。一連のバトルを締めくくるところのジム・ブロードベントの自動車が木に激突するさまが面白くかつシークェンスを終結させるに足る決定力を有しているのは、それがロングのワンカットだからだ(もちろん、ここで私はことを非常に単純化して云っています)。
またこの映画が基本的にサスペンスとして成立していないのは、「村人たちは明らかに怪しいけれども、本当におかしいのは実はサイモン・ペッグのほうなのかもしれない」という可能性をまったく残さずに語りを進めているためだ。そのような事態を引き起こしている最も大きな要因は殺人事件のたびに律儀に殺人者の姿を明示していることなのだが、多くの過去の映画の記憶を基に成り立ったこのイギリス映画が(不自然なほどに?)ヒッチコックを感じさせないのは『疑惑の影』や『断崖』に反して主人公ペッグの(「観客の感情移入の対象」あるいはもっと端的に「善」という)主人公たる資格が一瞬たりとも脅かされていないからだとも云えるだろう。
もっともらしいペッグの推理よりも「真実」はもっと単純だ、など物語を脱臼させる仕方はよいと思う。馬鹿馬鹿しく、狂気的。
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