[コメント] チェ 28歳の革命(2008/米=仏=スペイン)
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ストーリーはドキュメンタリーのように進行する。 ゲバラが考え悩むシーンなどほとんど出てこない。
主軸は辺境からハバナへと向かうゲリラ戦のライン上にあるが、キューバ上陸前のメキシコ、革命後ニューヨークでの国連演説及びメディアによるインタビューなどが度々挿入され、予備知識が全くない人にとってはかなり理解するのは難しいと思う。
ニューヨークでインタビューを受ける前、白粉を塗るかと聞かれ、一度は断るものの、やはり頼むとゲバラが言うシーンに、ある種の「迷い」が見て取れる気がする。
進行していくに連れ、ある確信めいたものが生まれてきた。 キューバ、アルゼンチンに滞在したことのある私の経験から言えば、 ゲバラ扮するデル・トロが喋っているスペイン語は、キューバの発音でも、アルゼンチンの発音でもない。それは中米及び、北部南米諸国のスペイン語発音に近く、 おそらくデル・トロの故郷プエルト・リコのものだろう。
ソダーバーグは敢えて、デル・トロの話すスペイン語に注文をつけなかったのではないか? スクリーン映るのがゲバラでもデル・トロでもない、米国に云われない抑圧と介入を受けた全てのラテンアメリカ人の象徴として描きたかったのではないのだろうか? ドキュメンタリーのように感じられる進行は、こうした態度が最大の脚色になっているからの様な気がしてならない。
現在、米国国内に居住する中南米系市民の数は黒人のそれを超え最大のマイノリティになった。 マイノリティが任期4年の米国国王になろうとしている、 急速に左傾化、反米化を表明・進行する中南米の国が増える、今このとき、 もう一度ゲバラの存在意義を「衒い」なく問い直そうという姿勢に拍手を送りたい。
ニューヨークで見せた「迷い」のその後、 そして国づくりを捨て、再び革命の現場に戻るゲバラは、体制を壊すことしかできない革命屋なのか?
続編に答えを期待しています。
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