[コメント] 今度は愛妻家(2010/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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そう、夫婦間の愛情ってのは、案外見つけにくいものだ。正直、妻のことは大好きなはずなのに、誰にも渡したくないから結婚したはずなのに、釣った魚には餌をやらないってわけではないんだけれど、いつの間にか愛の言葉をささやくことも忘れてそれでも何とも思わずにいるものだ、男って。そんな歳とるごとにダメダメ化しているおっさんたちに、この映画はいったいどれほどの涙を流させれば気が済むのだろうか。
多くの方と同様に、やはり写真のシーンで号泣した。自分も昔は、それこそ今考えると恥ずかしくなるくらい妻の写真を撮ったものだ。それがいつしか妻と子の写真となり、最後は子どもだけの写真となり…と、気がつけばレンズの中に妻の姿は何処へという状態。でも、そんな状態でも、本当は撮りたいんだよね、トヨエツみたく「かわいいな」とか言いながら、昔みたいにいっぱい、いっぱい、少しばかりしわがあり、手だってガサガサしている妻の写真を。そんな自分の奥底の気持ちに本当に気付かされる映画だった。
ラジオで言ってたけれど、行定勲は自分たちと同じく薬師丸ひろ子世代で(彼もまた「バラエティ」を読んでいたのだろうか)、映画監督となった今、もう一度彼女が光り輝く時代を築きあげたいと思っていたとのことからこのキャスティングが実現したらしいのだが、そんな彼の思いが過剰になり過ぎることなく、彼女を彼女らしく撮ってくれたことはファンとして本当に感謝というか、素晴らしい仕事ぶりだったなと感心した。例えば沖縄で写真撮ろうかってときに軽くピョンピョン飛び跳ねる薬師丸ひろ子って画、あんなところがすごく自然に撮れているところなんか、くすぐったいんだけど印象に残る嬉しいショットだった。
あと、長くなるから書かないけれど、トヨエツも水川も濱田も、内面演技が要求される難役を巧く演じていたと思うし、石橋に至ってはもう至芸。いやもう恐れ入りましたって感じだった。
欲を言えば後半がトヨエツを中心にやや饒舌に過ぎた感はあるけれども、元々が舞台劇である作品だから、台詞に頼る部分が大きいのは仕方がない。けれど、そんな些細な欠点は隣で涙を流している妻の姿を見たら吹き飛んでしまった。
このように、この作品は多くの夫婦たちに観てもらいたいと心から思う秀作である。今は夫婦50割引ってのもあることだし、是非是非一緒に劇場で。
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