[コメント] Dr.パルナサスの鏡(2009/英=カナダ)
悪夢系の監督といえばスタンリー・キューブリックの他に居ないと信じて疑わないのですが、どうしても無視できない存在としてこのテリー・ギリアムさんがいらっしゃるわけです。
キューブリックといえば映像界の神。鬼。アンタッチャブル。でももしかして、もしかしてこのテリーさんも神が与えてくれるあの快感を、あの陶酔を与えてくれるかもしれないと期待しちゃう人なんですね。いえ、毎回裏切られているんですが。でも「今回は・・」と結局観ちゃう人なんですよ。
テリーさんが神の域に達せないのは「シンプルさにかける」ということにつきます。言い過ぎちゃうんです。黙っていればかっこいいのに。一言多いというか、自分で「ほんでな、これがこうでな、こうなってこうなっててな、な?めっちゃよくない?な?」って言う声がどうしても聞こえるっていうか、勿体ないっていか、要するに野暮なんですよね・・ でもそういうところがこの監督のチャーミングな部分。人間くさいというか。
神が神たる所以は、執拗なまでの完成度と極限まで研ぎ澄まされた美。あの厳しさは凡人にはできない。 それに比べてテリーさんのゴッタゴタにとっ散らかった状態と言ったら。ヒース・レジャー死んじゃってここまま泣き寝入りかと思いきやラッキー!CGで全部カバーできんじゃん!って気づいたところまでは良かったのに、「あんな、あんな、こいつの顔いきなり変わってまうのはな、ヒース死んだからやねんけどな、な、ええやんな?こういう方向でもっててもアリやんな?な?」とまたそこでしつこく言っちゃうんですよ。さーっと流しとけば皆黙ってみてるのに・・かわいらしいっていうかもったいないっていうか・・ 学校でキューブリックがズル休みしても超成績よくて机の上が綺麗な子供だとしたら、テリーさんは無遅刻無欠勤で学校に住んでんのかってくらい学校好きで机は超キタナイみたいな子供だと思う。でもIQの高さ実は同じだったりするっていう。
とりあえず私の期待する神の与えしあの恍惚の世界は、彼には一生期待できないと実感しましたが、この監督のセンスは、これもまた唯一無二。もしかしてティム・バートンの世界よりも性にあってるかもしれない。何回も観たいとは思わないけど。(リリー・コールに目を付けてくれたのはナイスです)(10’2/2 劇場)
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (5 人) | [*] [*] [*] [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。