[コメント] 捜索者(1956/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
ファーストカットとラストカット、逆光の扉の影に縁取られた青空の印象的なこと。
10年近く前に初見した際には、この映画が殆ど理解できなかった。主人公はいったい何に執念を燃やしているのか?脈絡もなく差し挟まれる「笑い」のシーンには何の意味があるのか?再見してみてそうした違和感は甦ってきたのだが、一方でそれこそがこの常軌を逸した映画の底知れない魅力であることも実感する。
どうしてこんなにも「解り難い」のか。そのヒントは、あるシーンに隠されている。
ウェインがジェフリー・ハンターとハリー・ケリーJr.を従えてコマンチ族を追う件り。二人と二手に分かれた後に合流したところで、ウェインの様子がおかしく、マントを失くしていることにハンターが気づく。ウェインはその場では理由を語らない。で、しばらく後のシーンで、二手に分かれた先で攫われた姪(長女)の遺体を発見しマントで包んで埋葬したのだ、という理由が説明される。
この「説明」のシーンは、プロット上の必要というよりも、観客に対して状況を解らせるための役割を果たしている。このシーンを配置したことは、ジョン・フォードにとっては観客に対するサービスと言ってもいいのではないだろうか。フォードからすれば、そんなこと説明しなくても察しろよ、と言いたいところなんだろう。だから、ウェインがあれほどコマンチ族に憎悪を燃やす理由も、義姉(兄嫁)との曰くありげな態度の理由も、語られることはない。なんと大人な映画!
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