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[コメント] 大鹿村騒動記(2011/日)

堂々“喜劇”
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







内容を全然知らない状態で阪本順治の新作が『大鹿村騒動記』と聞いた時は、明治か大正頃の農民一揆か何かの話かと思った。 だって「騒動記」って。古くさい。まるで喜劇みたいじゃん。 と思っていたら、堂々“喜劇”。 コメディーじゃないんだ。古式ゆかしい(?)喜劇。

いやもう、年季の入った豪華俳優陣が安定してるんですわ。でんでんとか。でんでんかよっ! そして笠松カメラがね、風情があるんだ。「ああ、映画だなぁ」って画面。 私が無駄に阪本順治評価が高い理由の半分は、笠松カメラにあるかもしれない。 まあ脚本は、何を書いても70年代風でおなじみ荒井晴彦だから。 たぶん嵐の場面なんか、情感たっぷりに書いてると思うよ(<勝手な推測)。

そんな荒井晴彦の“70年代的情緒”が(時に浮いてしまいがちなんだが)、この映画では、田舎という舞台設定と風情あるカメラと安定した役者陣のおかげで(かどうか知らないが)、実にうまく消化されていたように思う。 なんかね、全体的に「余裕シャクシャク」で撮られている気がするんですよ。 原田芳雄のアップだけで物語る阪本順治らしい「不親切さ」とかね(笑)。

余談

これが遺作となった不世出のアウトロー=原田芳雄。 私の初体験、かどうか分からないけど、最初にインパクトを持って受け止めたのは、私が愛してやまない『ツィゴイネルワイゼン』。 そりゃもう、大楠道代と並んでスクリーンに写っているだけで感慨深いものがあるわけさ。 いやまあ、大谷直子でも感慨深かったかもしれないけどね。

原田芳雄は何を演じても“原田芳雄”だと思うんだが、普通、役によって変化する役者が良いとされ、何を演じても同じに見える役者ってのはあまり評価されない。 日本には「何をやっても自分自身」で評価される希少な役者がたった二人だけいた。 原田芳雄と桃井かおり。 非常に貴重な個性派俳優の死を惜しむ。

(11.07.31 新宿バルト9にて鑑賞)

(評価:★4)

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