コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] スリー・ビルボード(2017/米=英)

世界には不条理と怒りが溢れている。その己の中の「怒り」を、ないことにするでもなく、捻じ曲げるでもなく、忘却するでもなく、あるがままに、飲み込み、「付き合っていく」。どんなに苦しく滑稽なあがきでも、望んだ結果を得られなくとも、そう生きていくほかない、ということか。 真摯な達観に至るロックウェルの表情が絶妙。
DSCH

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







キャスティングイメージやプロット、意外に強いユーモア成分からしても、ゑぎさんご指摘の通り、あからさまな「コーエン・リスペクト」で、これは公開前の段階からそう思っていたし、実際見た印象もそうだった(「人生は、世界は、ままならない」)。

でも、コーエン兄弟のそれが諧謔で終わることが多いのに対して、これは優しい(甘いという意味ではなく)メッセージであると読み取れた。「怒り」を内包しながら前を向いている。簡単にできることではないのだが、二転三転するプロットの中から生まれる不思議な紐帯(?)の中から、ごく自然に?この悟りが見いだされる。凄い脚本だと思うし、多くの人が、この悟りのなかで生きていくほかないだろう。泣きながらオレンジジュースを渡すシーンが秀逸。

そして、やはりというか、この複雑な悟りを負うロックウェルの演技が絶品だ。『月に囚われた男』でもそうだったが、この人は怒りと悲しみを押し殺し、半ば泣きそうだが平静を装おうとするギリギリの表情が素晴らしいのだ。感銘を受けた。もちろん、その他の主演二人にも。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (6 人)ぽんしゅう[*] jollyjoker[*] ゑぎ[*] 週一本[*] disjunctive[*] けにろん[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。