[コメント] クライ・マッチョ(2021/米)
軽快なギターにのせて、昇る朝日を背景に車と並走する空撮(イーストウッド印)から始まる冒頭の“通勤”シーンのカティングがカッコいい。ここで私はもう釘づけ。老残のカウボーイがキャリアという無形の機智で人生の借りを返し収まるべきところに納まる幸せな小品。
ときを経て、いまはもう幹と枝だけの枯れ木だが、その枝ぶりが醸す威風から、かつて瑞々しい葉におおわれ、その地のメルクマールとして圧倒的な存在感を誇った大樹。孤独な老カウボーイ・マイクにそのままクリント・イーストウッドがダブル。
今から40年余り前の1980年に映画化の話しがあった企画だそうだ。イーストウッド、当時50歳。もし、そのとき主演していたら、もっと深刻で生臭いアクション映画になっていたかもしれない。今(2020年代)のイーストウッドでよかったと思う。90歳の老木の幸福感。かつての大樹が枯れたからこその「自然体」の味なのだ。
イーストウッドの足取りは、4年前の『運び屋』にもまして、よろよろとおぼつかない。あれはきっと演技なのだろう。演技であって欲しい。
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