[コメント] RRR(2022/インド)
勿論、誉めるべき点は多々あり、例によって、上げたり下げたりしながら感想を記します。まず、ビームとラーマ、二人の主人公の内、最初に見せ場があるのはラーマの方で、暴動の鎮圧シーンだ。こゝは導入部など、大俯瞰(鳥瞰)ショットの安っぽいCGが目立つ。実は、こんな画面をこの後も見せられるのか、と思ってしまったのだが、それは杞憂でした(以降のCGショットはこれほど安っぽくない)。しかし、ラーマは強すぎる。もうこの人がヤラれるなんて考えられなくなる強さだ。これに対比するようなビームのシーンは、トラとの闘いのアクションだが、この演出、ラーマ登場シーンに比べると弱いと思う。観客によって感じ方は異なると思うが、私は、以降、ラーマの方が断然カッコいいと思いながら見ることになった(ルックスも含めてそう思う)。
前半の見せ場の中でも、最も荒唐無稽な面白さが味わえるのは、ビームとラーマの出会いとなる、二人が協力して川の小舟の子供を助けるシーンじゃないだろうか。アクションのデザインも面白いが、彼らの目配せと仕草だけで意思疎通し、ビームがオートバイで、ラーマが騎乗して、というお膳立ての演出がいいと思う。これは、ラスト近くのクライマックスでも反復されるのだ。こういうところは、よく考えられている。あと、世評高いナートゥダンスのシーン。こゝも確かに凄いアクションだ。勿論、瞠目することはするが、私の好みを云えば、ダンスシーンって、もっと豊かな時間を定着させる演出が好きだ。それに、ジェニーがビームに好意を寄せる納得性がイマイチじゃないか。私はラーマの方がカッコいいと思うし、好みは人それぞれだからいいとしても、せめて、ジェニーがビームに好意を持った、契機になる演出が必要だったんじゃないか。
そして、後半のクライマックス、地下独房からラーマを救出してからの森の中での殺戮シーン。この場面の途中で、オートバイ部隊が森に突入して来るショットにはゾクゾクした。しかし、このクライマックスでも、ラーマの独壇場なのだ。無限に弓矢を生み出す、戦う神のようだ。ただ、総督やその夫人と部下たちがいる城に対して、どう戦いを挑むのだろうと疑問に思いながら見ていたのだが、一瞬にしてケリをつける、というこの見せ方は簡潔で素晴らしいと思った。
さて、反英主義が前提(基本設定)の映画なのだから、英国人の鬼畜ぶりと、お返しとしての大虐殺を嬉々として描き、唄って踊って終わることにイチャモンを付ける気はないが、しかし、悪玉のラスボスである総督とその夫人が、余りに酷い、人間味のないキャラであるのは、映画として底が浅くなっている弊があると私は思う。例えが古くて恐縮だが、ハリー・ライムやレプリカントのロイのような、凶悪でも豊かさを感じさせるキャラクタリゼーションだったら、映画も豊かになっただろう。また、ジェニー一人が、良い英国人、という描き方も落ち着きが悪い。エンディングで彼女が笑っているのはマンガのようだ。
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