[コメント] 2001年宇宙の旅(1968/米=英)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
まず、投票してくださった方々、申し訳ないです。2002.8.28.更新しました。
ではでは、始めま〜す。
題して、
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「2001年」への異常な愛情
又は私は如何にして毛嫌いするのを止めてこの映画を愛するようになったか
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一番好きな映画を挙げろ、と言われたら、迷わずにこれを答える。たぶん、これを越える傑作は、現れないだろう。
しかし、見る前は、食わず嫌いの状態だった。難解だと聞いていたからだ。僕は、わかりやすくて、面白い映画が好きだったのだ。娯楽大好き人間だったのである。だから観もしないで毛嫌いしていた。
そんな映画を観る気になったのは、特撮がすごいと聞いたからだった。特撮を愛する心をくすぐられて、一回観てみようと思ったのだが、すぐには観なかった。わざわざ3ヶ月我慢した。2000年が終わりに近かったからだ。2001年1月1日。観るなら、この日だ(笑)
実際、わかりにくいシーンが多かったし、退屈だった。やっぱ昔の映画やなー。テンポが遅いべ。無駄なシーンを削れば、もうちっとましだったかもしれん。でも、夢のある映画ではあったな。……これが最初の感想だった。
その後、その「夢」はどんどん膨らんでいく。むかしむかし、サルに「何か」が知恵を与えて、人類へ進化させた。2001年、木星へやってきた人間は、再び「何か」の手により、次の段階へと進化する……。そんな空想が膨らんだ。……ん?なんだ、これで正解じゃないか。
僕がこの映画を好きになった理由の一つがここにある。映画の意味が、原作も解説書も無しに伝わったのだ。確かに細部では、まだまだ気付いていない部分もたくさんあったが(<月を見る者>たちが死にかかっていたことなど)、これだけ話の筋がわかれば十分だった。テーマと、映画全体のストーリーはつかめたのだから。HALが暴走した原因も、ちゃんと読みとれました。こんなにわかりやすい「難解な映画」は初めてだった。(もっとも自分の空想が正解であることを知ったのは、解説書を読んだからだが)
驚くべきことに、この映画は、『猿の惑星』とまったく同じ年に公開されたものだった。それを知ったときには、雷に撃たれたような衝撃を受けた。「2001年」は、「猿の惑星」よりも十年は後の映画だと思い込んでいたのだ。僕が「2001年」の特撮のすごさを、本当に知った瞬間だった。
さらに、「削るべき無駄なシーン」と思っていたシーンが、無駄ではなく、ちゃんと意味があることに気付いた。(これも、解説書を読まずに、自分で気付いた部分は少なくない)
繰り返すが、難解だと聞いていたため、食わず嫌いだった。僕は、芸術は理屈では語れない、という言葉が好きではない(完全に否定はしないが)。意味がわからないものにどうやって感動しろというのか。言うならば、「理屈で語れないものは芸術ではない」のである。
「2001年」は、この「理屈で語れないものは芸術ではない」という僕の価値観を、ちゃんと満たしていた。もちろん理屈を越えた感動もある。すでに書いたように、空想力をかき立てる力を持っていたし、オープニングの天体直列に、「ツァラトゥストラはかく語りき」が被さったときには、一気に映画の世界に引き込まれてしまった(ちなみに、僕はこの映画に「ツァラトゥストラはかく語りき」が使われていることさえ知らなかった。予備知識無しでも引き込まれたのだ。ただし、その後は退屈したけど)。
僕はこの映画を他人には勧めない。退屈なのは事実だと思うからだ。僕自身が初めて観たときに退屈してしまったのだ。もし、誰かがこの映画を観たいと言ったら、僕は、何の解説もせずにDVDを手渡す。それで相手が、つまらなかった、これのどこが傑作なのかわからない、と言ったなら、それはそれでかまわないと思う。
ただ、これだけは主張しておきたい。僕は、決してキューブリックの名前や、傑作という言葉に踊らされているわけではない。この映画がそんな理由だけで持ち上げられているわけではない。そのことは、食わず嫌いだった僕が保障する。
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