[コメント] 幸福の設計(1947/仏)
掛け値なしの傑作。なんと豊かな運動の映画。特に前半と終盤が恐るべき運動量だ。画面の縦横に様々な人物が入り込み、画面内で動き回る、その量も速度も全く常軌を逸している。
縦横の縦は、例えば、アントワネットが道路を歩いて来て地下鉄への階段を降りていくカットが、かなり高い俯瞰で撮られており、画面の上から下への動きで表現されているようなことを指している。或いはアパートメントのらせん階段の昇り降りだとか。また、屋内でも屋外でも効果的なトラック移動とパンチのあるアップカットが折り込まれる。実に快活な、映画を撮る喜びに溢れた画面ばかりなのだ。
さて、ベッケルらしいビンタの場面が、中盤で隣人の夫婦(アントワネットが雑貨屋の親爺からもらった花束を譲ったことで喧嘩になる夫婦)の間であり、嬉しくなっていると、ラストはちょっと想像を絶するような、観客の予想を遥かに超えた、凄まじいファイトシーンなのだ。もうほとんど決闘と云っていい。この過剰さこそ映画らしさと云うべきだろう。原題にとらわれず、自由に設定された邦題も素晴らしい。
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