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[コメント] 鉄道員(1956/伊)

人と人の生き甲斐とか信念とかいうものは、お互いどこかで噛み合わず、そのどちらかを立てることができないから行き違いになる。酒飲みの頑固親父が幸福な一夜をむかえることができたのは、彼にとっての一番の祝福であったろう。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







小さな頃に親と一緒に観て、親父が悲惨な運命を辿る映画だと誤解していた。実際、彼は職場においても家庭においても、古風な生き方しかできない男であったから、鉄道員としての血が騒いでスト破りのような行為をしてしまうし、娘や息子を不幸にすまいとしていらぬことに口を出し、喧嘩して家から追い出してしまう。イタリアン・ネオ・レアリスモの映画なればこそ(と思い込んでいたので)、親父が総ての家族から見放され、野垂れ死にしても不思議はなかったのだ。

だが、この映画の創り手もワンマン親父を愛していたのだろう。親父は死ぬまえに夢のような一夜を過ごす。悲しみは毎日味わい尽くした。せめて聖夜くらいは皆と喜びを分かち合おうじゃないか。

この映画に親父の死にまつわる泣きのシーンは入らない。当然だ、明日からは母にも息子・娘にも懸命に頑張らねばならない日々が待っているのだ。そのエネルギーがかれらの営みを支えているのだから。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (5 人)けにろん[*] りかちゅ[*] いくけん 24[*] ナム太郎[*]

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