[コメント] クーリンチェ少年殺人事件(1991/台湾)
切り取られた光と闇、そこにそのときと同じ速さで流れる時間、空気、時代、そして刻まれる一瞬・・・映画的な美しさにあふれた映画。
安易にハッピーになれるわけでもない、ボロボロに泣けるわけでもなく、スカッとカタルシスがあるわけでもない。でも、これが映画だ、と思う。こういうのが映画なんだ、と。
唐突とさえ思える少年の最後の行動まで、映画は淡々と時間を積み上げる。私たちは説得させられるのではない。何と言ったらいいのだろうか、そのままを“理解する”・・・ではちょっと違って、そのままを“知る”と言えばいいのか。
少年の焦燥、少女の苛立ち・・・なじみのある思春期特有の息苦しさ、そこに時代や世相が重なって、事件は起きる。この事件の原因はこれこれこういう理由で・・・と文字に固定して説明されたら、私はこんなにわかることはできなかったと思う。ただ積み上げられた映像だったからこそ、わかったのだと思う。違う国の違う時代を生きた人々の物語を。この共感は映画にしかできないものじゃないだろうか。
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