[コメント] M★A★S★H(1970/米)
戦争映画「なのに」ではなく戦争映画「だから」こそ、あえて悪ふざけ遊んでみせるアルトマン流ダンディズム
世の中には「悪口芸人」とでも言うべき人たちがいて、どれだけ勝手な悪口を強烈な口調で言っても許されるばかりか、かえって喜ばれる。なぜかというとそういう人は大概の場合、過激な悪口の背後に、常に一種の「正義」を匂わせている場合が多いからだ。見ている方は悪口の妙だけではなく、いわば悪口を「あえて」言ってのけるダンディズムを楽しんでいるのである。朝鮮戦争の前線6km手前という危険な場所で、悪ふざけ続ける戦医たちにも、そんなある種のダンディズム(=大人の余裕)を感じる。
戦争映画なのに残酷な戦闘シーンが1つもなく(!)、にもかかわらずこの映画がすこぶる面白い「反戦映画」なのも、無責任に「戦争反対!!!」を力みまくって訴える暑苦しいだけの自称・反戦映画や、反戦映画とは名ばかりの戦争を利用しただけの「お涙ちょうだい映画」にはない、アルトマン流ダンディズムが醸し出すユーモアの所為だと思う。『フルメタル・ジャケット』の前半部分なんてかなり『M★A★S★H』っぽいし、(比べるのもどうかと思うけど)『プライベート・ライアン』に足りなかったのも、ちょっとしたユーモアだったんじゃないか?(アルトマンにしてみればスピルバーグなんて、まだまだガキなんだろうなあ、きっと。)
そして、本当に「頭の良い人」が作った映画というのは、いうもこんなユーモアに溢れているものなのではないか―見終わった後、ふとそう考えた。
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