[コメント] マイライフ・アズ・ア・ドッグ(1985/スウェーデン)
幸福と不幸の境界線は、ライカ犬でも家族でももちろんお金でもなく……。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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自分の中にあるんだ。
ラッセ監督が古き良き故郷について淡々と語りかける至福のひととき。 余計な説明を一切排し、シーンとシーンを丁寧につなぐだけで、そこに登場する素朴な人間達のささやかな喜びを見事に切り取る。愛犬が死に、母が死に、悲しみのどん底に落ちるべき普通の少年は「ライカ犬」との比較の中で自分の「幸福」を実感しようと努力する。
何度となく繰り返されるシーンはイングマルの心の世界。
それは「母との幸福な想い出」と「星空」
母と一緒ににこやかに暮らす最大級の幸福を欲し、その一方で「ライカ犬」との比較で最小限の幸福で満足しようとする。いじらしい想いは実に哲学的重みをはらむ。
揺れ動く心とは裏腹に生活という小波は次々とやってきて少年を現実へと引き戻す。
ラスト。
少年と同じ名前を持つスウェーデンのヘビー級ボクサー イングマル・ヨハンソンが世界王座を奪取する。その中継をラジオ放送できく村の人々は喜びのあまり声をあげる。少年イングマルはソファですやすやと眠っている。
このシーンで終了。
この瞬間はボクサー・イングマルと少年・イングマルが壁を打ち破った刻だ。
少年は非現実的な母との夢の生活を離れ、現実世界の中で安らかに眠る。そこにはもうライカ犬は必要なかった。
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