[コメント] 機動警察パトレイバー 劇場版(1989/日)
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確かに多くの人はおかしい、と感じていただろう。景気が良いと言いつつ、地価は狂ったように高騰し、庶民には土地購入がほとんど不可能になった(その代わり高級自動車が売れた。家が買えないなら車でも、ということだろう)。一般庶民にとんでもない額の相続税が課せられ、古い民家や代々続いた老舗が立ち退いた。暴力的な地上げが横行し、街には虫食いのようにサラ地が出現し、大空襲にも生き残った古い町並みはこの時代にほぼ姿を消した。しかし経済最優先のお国柄、誰も表立って批判はしなかった。 そんな中、華やかな巨大建設プロジェクトの裏に潜む闇、コンピューターに市民管理を任せる怖さ、そうした事柄を観念ではなく絵で見せた(廃屋と化した区画の描写は圧巻)ことは特筆に価するだろう。昔から特撮やアニメの方がフットワークが軽く、時事問題を取り入れやすかったという伝統が日本にはあるが、そう言っては押井監督に失礼だろう(ちなみに同年、宮崎駿監督は『魔女の宅急便』)。
また、人間はどこまで人間なのか、という問題提起がまだ初歩的だがなされているのも興味深い。犯人はすでに死んでいるわけだが、コンピューターに仕掛けたウィルス及び諸般の仕掛けによって彼の意思は実行されようとする。結果をみれば、彼が生きて実行しとのと同じ成果が得られたということは彼の意識は生きている?と見なしても不都合はない・・・(レーダーに彼の反応が現れるシーンはかなり怖いが、こうした考えを暗示している。コンピューターの画面上では生きている?)
最後の格闘も派手で見せ場に事欠かない。なかなかの傑作。
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